変哲さんの好きな良寛句

 

俳優で芸能研究者として名を成した小沢昭一さんは、
俳人でもあり俳号は変哲。
『俳句で綴る変哲半生記』(岩波書店)
を読んでいましたら、
俳句はもちろんたのしく
滋味にあふれてもいるわけですが、
とちゅういくつか
俳句にまつわるエッセイが録されており、
かつて一世を風靡したラジオ番組
『小沢昭一の小沢昭一的こころ』の語り口
をほうふつとさせ、
なつかしくなりました。
変哲さん、
良寛さんの俳句が好きらしく、
いくつか紹介し、
肩の凝らない文を添えています。
良寛さんの句のなかで「私の最も愛する句」
として挙げているのは、
「柿もぎのきんたまさむし秋の風」
ははぁ。
きんたまねぇ。
いまみたいにズボンじゃないだろうから、
下から風がねぇ。
なるほど。
この句を好きだという変哲さん、
この句をつくった良寛さん、
どっちも好きだなぁ。

 

・秋の香と思へば灸のにほひかな  野衾

 

新涼

 

涼し、だけだと夏の季語ですが、
涼に新がつくと秋の季語。
いまがまさにそれかなぁと思います。
雲のかたちが夏とは異なり、
だけでなく、
流れる方向がちがっていたり、
空を舞台にして前で踊る雲あり、後ろで踊る雲あり。
目まで涼しくなる感じ。

 

・秋天より天狗現る気配あり  野衾

 

龍角散

 

タクシーの運転手との会話。
「地球環境がおかしくなったせいで体がついていきません」
「ほんとにそうですね。
わたしは咳がなかなか止まらないんです。熱はないんですが…。
お客さんを乗せて咳き込まないよう、いつもノド飴を舐めるようにしています」
「わたしもノドの不調がながくつづいています」
「そうですか。お客さんで多いですよ。そういう方」
「やっぱり。
そうだ。鍼灸の先生に教えてもらったんですが、
龍角散を試してみたらいかがですか」
「ゴホンといえばのアレですか?」
「そうです。わたしは秋田出身ですが、
あの薬は、かつて秋田藩の佐竹の殿様が喘息持ちだったらしく、
それを治すために御典医が開発したものだそうです」
「そうですか」
「中国人の間では神のクスリと称されているのだとか…」
「へ~」
「いや、鍼灸の先生の受け売りです」
「わたしも服んでみようかな」
「試してみてください。楽になると思いますよ」
「分かりました。いいお話をありがとうございました。
帰りにさっそくクリエイトで買います」

 

・雲の名を思ひ浮かぶる初秋かな  野衾

 

秋風

 

家が山の上にあり、
窓を開けると
ようやく涼しい風が入るようになりました。
夏がひどかっただけに
いっそう気持ちよく感じるのかもしれません。
週の天気予報を見ると、
最高気温がどの日も三十度を割っており、
いよいよ秋本番です。

 

・新涼の珈琲カップの白さかな  野衾

 

やれやれ

 

夜、窓を開けて寝ることさえできない日がありましたが、
おととい、きのうと、
窓を開け、
網戸状態にして眠りました。
よく眠れた気がします。
エアコンをつけたままよりマシ。
このごろ
天気予報をみる頻度が高くなりました。
日中の三十度超えは少々きつく
感じられ。
来週後半は
二十五、六度の予想ですから、
やっと
深呼吸ができそうです。
深呼吸の必要。

 

・階(きざはし)を上り下りする初秋かな  野衾

 

石川文庫蔵書目録

 

甲子園で旋風を巻き起こした金足農業高校のグラウンドの横に
石碑があるそう
(今度帰省したら見に行きたい)で、
そこに
「寝ていて人を起こすことなかれ」
の文字が刻印されている
という。
この言葉、
農聖とよばれた石川理紀之助のもの。
金農出身の父に確認したところ、
父もよく知っていた。
川上富三が編んだ『石川文庫蔵書目録 1』『同 2』を古書で求めてページを繰ると、
理紀之助がなにに興味を持ち、
なにを読み、
なにを書写していたかがわかっておもしろい。
宮崎安貞、二宮尊徳の書籍があるのは
なるほどと思われるが、
万葉集、古今和歌集、源氏物語、徒然草などの
古典が名をつらねており、
農業指導のかたわら、
ふかく世界をとらえようとしたであろう理紀之助の
人となりが見えるような気がし、
ますます興味が高まった。

 

・父の背の灸の煙や盆支度  野衾

 

残暑

 

なかなか涼しくなりません。
二十五、六度になるのはいつの日か。
とは言い条、
数日来、
蟬の声から秋の虫たちの声に代わっています。
自宅が保土ヶ谷の山の上なので、
夕刻、
藪の辺りから
すずしげな声が聞こえてきます。
体感温度はまだまだですが、
せめて聴覚だけでも秋を感じていたいものです。

 

・鍼灸院痛さ和らぐ秋となる  野衾