接続詞「そして」

 

いただいた原稿が組み上がると、いよいよ校正作業に入りますが、
鉛筆で割とチェックすることばに接続詞の「そして」
があります。
『明鏡国語辞典』の説明には、こうあります。

 

①前に述べた事柄に引き続いて次に述べる事柄が起こる意を表す。
そうして。それから。
「車はスピードを緩めた。――停車した」
「旅に出る。――人に会う」
②前に述べた事柄に付け加えて述べる意を表す。
そうして。それから。
「この小説は、深い感動と、――勇気を与えてくれる」
「兄はアメリカへ、――弟は中国へと旅立った」

 

いただく原稿の多くは論文で、②の使い方が目につきます。
論文の場合、思考の論理がだいじですが、
「そして」をふくめ接続詞は、
論理を補強するように働きます。
なので、
なるべく接続詞がなくても論理が徹底するように、構文を矯めつ眇めつ眺め、
文章を吟味するようにしています。
そのことを通して、
論理の強度をつかみたいと願いながら。
たとえば、引用した②の例ですと、
論文ではないので一概に言えませんけれど、
論文の中で目にすれば、
おそらく、
「この小説は、深い感動と、そして勇気を与えてくれる」
の「そして」に鉛筆で線を引き、
「トルでいいのでは?」と著者に伝えるべく、
チェックを入れるでしょう。
「この小説は、深い感動と、勇気を与えてくれる」
になります。
そうするとこの文では、
読点が「そして」がある時よりも利いてくると思います。
しかし読点まで消して
「この小説は、深い感動と勇気を与えてくれる」
にすると、
ツルンとした文になるので、
そうはしたくない。
前後の文章ともあわせ、
幾度か声にだし呼吸をふくめ、
くり返しくり返し校正することになります。
②のもう一つの例文も、
「そして」を消し、
「兄はアメリカへ、弟は中国へと旅立った」としたいかな。

 

・忙中閑寂しき母へ夏見舞  野衾