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1135
白浪を立てて舟行く賢島
きのうは、昼に印刷所の担当が
来社することになっていましたので、
その前に昼食をとっておこうというわけで、
早々に近くの交差点角にあるお店に入りました。
11時35分。
きょうは一番だろうと思いきや、
なんと、すでに五人もいるではありませんか。
カウンターにいつもの男性二人。
テーブル席に女性三人。
したがってわたしは六番目。
女性三人がいぶかしげにわたしを見ました。
驚きと不安の表情が顔に貼り付いていたかもしれません。
五人の前にはまだトレイが置かれていません。
担当者が来るまでに会社に戻れるだろうか。
だんだん心配になってきました。
やっとランチが出てきて、
わたしはもう、わき目も振らずに、
一心不乱に、ご飯と味噌汁とイシモチの塩焼きと
鶏カツとサラダとホウレン草とシラスのおひたしと
タクアンと菜っ葉の漬物とおまけにデザートのイチゴ三個を平らげ、
コーヒーは断り、
お代を払って威勢よくごちそう様でしたーと言い、
速歩から小走りに転じてビルまで戻り、
エレベーターなど文明の利器に頼ることをせず、
脇の階段を一段飛ばしでぐるりぐるりと三階まで。
は~。は~。は~。は~。は~。は~。
ケータイを開いてみたら、12時07分。
ドアを開ける。
静かに弁当を食べているイシバシの姿が眼に入る。
よし。担当はまだ来ていない。
ふ~。
こうして戦々恐々の昼食は終りを告げ、
わたしは万全の態勢で席に着き、
運慶の金剛力士像よろしく、口をへの字に曲げ、
鼻息も荒く今か今かと担当の来社を待っているのでありました。
終り。
賢島おぼろに島の停泊す

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静日
五十鈴川神を宿して水温む
電話がかかってきたり、
こちらからかけたりすることもたびたびですが、
総じてとても静かな一日でした。
机に向かって原稿を読んでいると、
他に人が居ないように思える瞬間もあり、
おや? と思うのですが、
ゲラをめくる音が聞こえてきますから、
やはり人は居ます。
集中の気が充ちているのでしょう。
東京商工リサーチの調査によると、
出版社の倒産数は昨年が72で、
平成始まって以来の記録となりました。
安閑としているわけにはいきませんが、
日々の仕事を着実にこなし、
人様に喜んでいただける本作りを続けたいと思います。
ライターの森王子(玉子でなく)さんが書いてくださった
記事がミシマ社のミシマガジンに掲載されました。
春風社の仕事についてのインタビュー記事です。
こういう方向へ行きなさいと、
仕事から教えられます。
黒松や新芽萌え出で神を待つ

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今週は
杉古木おかげ参りの弥生かな
今月は、春風社始まって以来の刊行点数になりますが、
今週ですべて下版しなければなりません。
印刷所に版下やデータを渡すことを下版(げはん)、
または降版(こうはん)といいます。
途中、印刷所から送られてくる白焼き
(正式の印刷に付す前の試し刷りのようなもの)を
チェックしなければなりませんが、
あとは本が出来てくるのを待つしかありません。
ホームページ上の新刊の表紙も大幅に交代します。
乞う、ご期待!
健康に勝る宝なし伊勢神宮

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ケンチャナヨ
ふみ待ちてそわそわ顔の弥生かな
今月末刊行予定の『釈譜詳説』(上)のチェックのため、
昨日も河瀬先生にお越しいただき、
結局、四日連続でお運びいただいたことになる。
天才多聞くんの天才ぶりが今回も遺憾なく発揮され、
ほれぼれする装丁のラフができた。
先生の奥様もたいそう喜んでくださったそうだ。
ラフの紙を撫でさすりながら、先生は、
韓国の人はきっと驚くだろうとおっしゃった。
韓国では、本を作るのにそんなに凝らないらしい。
自前で紙を出力し、束ねて糊付けし、
それで本を出しましたというようなイメージがあるという。
以前、『僕の解放前後 1940-1949』
(柳宗鎬(著)/白燦(訳)/太田孝子(日本語校閲))ができて、
韓国の原著者に送ったとき、
柳先生は、日本の本作りの技術をいたく褒めてくださった。
アメリカの場合も、ペーパーバックで代表されるような、
割りと簡易な製本が多いのかもしれない。
本を情報として読む文化と、
そうでない文化の違いがあるような気もする。
情報として本を読む文化が一般的な地域では、
電子ブックへの移行が速やかに行われるだろう。
韓国語で「気にしない」ことを、ケンチャナヨと言うそうだ。
ケンチャナヨ、ケンチャナヨ。
気にしない、気にしない…。
気にしないことがいいのか、気にすることがいいのか。
善し悪しの問題でなく、
本作りに対する意識の違いがあるようにも思える。
春風や朝日とともに匂ひけり

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撫でさする
二階の子見ぬ間にデカくなりにけり
今月末刊行予定の『釈譜詳説』(上)のチェックのため、
三日連続で、訳者の河瀬先生にお越しいただいた。
『釈譜詳説』は十五世紀、
ハングルが発明されると同時に
ハングルによって記された釈迦伝であり、
韓国仏教の粋、
韓国文学の古典中の古典とされるものである。
河瀬先生は、
高校で国語を教えながら独学で韓国語をマスターし、
定年前に勤め先の高校を辞し、
韓国の東国大学大学院に入学、韓国仏教を勉強されてきた。
今回の翻訳は、その成果でもあるわけだが、
わたしはこの訳業を休日、少しずつ読んできた。
静かな心で集中して読みたかったからだが、
その過程で、この仕事が大変な偉業であることに
だんだんと気づかされた。
『新井奥邃著作集』を出すときの興奮がよみがえった。
昨日、忙しい多聞君に無理をお願いし、
装丁の最終バージョンをメールで送ってもらった。
出力して先生にお見せすると、
先生は、それを撫でさするようにして、
しばらく眺めていた。
わたしは、その様子を多聞君に伝えた。
社員一同も、先生のお人柄に触れながら、
協力し、仕事の醍醐味を味わったはず。
ありがとうございました。
なつかしき人に会ひたき弥生かな

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