たこちゃん

 

・三渓園まで冬を迎へに山手より

 

季節はすっかり冬めき、
寒々したきょうこのごろであります。
会社を出ると、
そとはとっぷりと暮れ。
紅葉坂の横断歩道をわたって右に折れ、
寒さをこらえ歩いていると、
「たこちゃんでちゅかー
たこちゃんでちゅかー
そうでちゅよー
みみちゃんは
そうなんでちゅかー
ママは
ふんふんふんふん
パパはねー
おしごとなんでちゅよー
もうすぐかえりまちゅからねー
……」
思わず振り返って見てみました。
黒いダウンを着た男が
スマホを耳にぴったりとあて、
歩道を行き交う少なくない人のことなど
ものともせず、
たこちゃんでちゅかー
を連発。
わたしはといえば、
振り向いた体をもとに戻し、
うつむきながら、
たこちゃんとは、
貴子?孝子?多香子?
はたまた多貴子?多津子?民子?(それはないか)玉子?(それもないか)
たら子?(それは絶対ない)
いずれにしろ、
「た〇こ」があまりかわいくて
「たーこ」になり、
「たーこ」が短くなって「たこ」になったのだなと、
ひとり考えをめぐらし
歩いたのでした。
たこちゃんでちゅかー。
おわり。

 

・初しぐれ猿も小蓑もなかりけり  野衾

 

エアロスミス

 

・しぐれ来よ友と步かん句をつくらん

 

若いころあまり聴かなかったエアロスミス、
会社でときどきかけては、
聴くというより、
流しています。
原稿読みに疲れたり、
むしゃくしゃした気分のときなど、
エアロスミスを聴くことで、
気分を晴らします。
いま聴くと、
音づくりが大げさで、
ある種のアニメソングに思えないこともない。

 

・冬ざれの丘を越えゆく歩数(ほかず)かな  野衾

 

吟行九人

 

・冬ざれて寂しがらせよ竹の風

 

土曜日はさろう句会メンバーによる吟行。
今回はJR山手駅より三渓園まで。
あいにくの曇り空、
ときどきぽつぽつ雨まで落ちてきましたが、
それはそれで風情があり、
ほぼ一時間のコースを歩き無事到着。
持参の弁当を食したあと
ほぼ一時間、
どなたも黙して語らず
ひたすら句作。
全員二句提出の後、
園内待春軒にてコーヒーをいただきながらの
句会とあいなりました。
初参加は今代司さん。
いま・よ・つかさ?
なんですか?
新潟のお酒だそうで、
いまハマっているのだとか。
なるほど。

下の写真は吟行とは関係なく、
ほどがや千成鮨の「いちじくのワイン煮」

 

・山手より犬もお山も冬の中  野衾

 

狩野亨吉

 

・煽られて群れ飛ぶ冬の烏かな

 

狩野亨吉といえば、
江戸時代の思想家・安藤昌益を見出した人として
つとに有名ですが、
三十四歳にして第一高等学校校長、
さらに
京都帝国大学文科大学初代学長を務めながら、
早々にケリをつけ、
その後は
「書画鑑定並びに著述業」
の看板を掲げ、
書画や刀剣の鑑定などで生計を立てた
ということになっています。
このひと
秋田県大館(おおだて)の生まれ、
安藤昌益も同地の生まれ、
ちなみにわたしも秋田県出身、
なれど我が町から大館はちと遠い。
安藤昌益も狩野亨吉も
いわゆる天才の部類でしょうが、
奇人変人ぶりも相当あったように思われます。
狩野亨吉があるとき近況を尋ねられると、
きゅうきょうであると。

「近況は窮境」
韻を踏んだ、
ただのダジャレかよ。
約十万冊の蔵書を東北大学に売ったものが、
現在も狩野文庫として
同大学にあります。
近況は窮境。
野の学者の代表格。
風が吹いているようで…。
きっぷのいい変なひとがわたし好き。

 

・ハイヒール冬をかち割る高き音  野衾

 

種なし

 

・濡れ猫や冬をまとひて総毛立つ

 

りんご、ぶどう、梨、みかん、柿、
ほかいろいろ、
果物はおいしいですねー。
甘さだけでなく、
酸っぱさがなんとも言えなくキュッときます。
ところで
このごろのぶどう、
ほとんどが種なし。
中には皮ごと食べられます、
なんてものもある。
食べやすいことこの上なし
ではありますが、
これがエスカレートして全部種なし
になったら、
種が滅ばないか、
などと、
要らぬ心配をしてしまいます。

 

・ホッと息冬の工事の灯りかな  野衾

 

エレベーター

 

・乾きたる音のどこまで枯野かな

 

原稿読みで疲れての帰り、
だれもいない廊下を
重く歩いてエレベーターへ向かうと、
閉まりかけているドアが
視界に入り、
急ごうか
という気持ちが
ほんの一瞬もたげたものの、
いいや、
で、
ドタドタとドアの前まで。
と。
当然閉まっているものと思い込んでいたドアが開いたままです。
「あ。どうもありがとう」
小学校三年生ぐらいでしょうか、
いっていて四年生ほどの女の子が
エレベーターの中でボタンを押し続けていました。
ドアが閉まっていっしょに一階へ。
「公文に行ってきたの?」
「はい」
一階についてドアが開くと、
女の子はまたボタンを押しています。
「ありがとう」
先に出て、
会館を後にし。
外はとっぷりと暮れています。

 

・日向ぼこ伸びする猫の背中かな  野衾

 

野の学へ

 

・ひとを責め嫌悪のみあり冬ざるる

 

「春風新聞」21号と映画「鎌倉アカデミア 青の時代」のチラシを
業者に依頼しDMしたところ、
つぎつぎうれしい感想が寄せられています。
十九期目に入った弊社は、
「野」を意識し
さきごろウェブサイトをリニューアルしましたが、
寄せられる感想から、
「野」の意味を
さらに考えつづける必要を感じます。
掘り下げていくイメージとして、
たとえば安藤昌益の「直耕」
新井奥邃の「謙和」がもたげてきます。

写真は、ひかりちゃん提供。

 

・テレビでは十一月のゴジラかな  野衾

 

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