パッド(鼻あて)

 

・同期会あの子あの顔鰯雲

 

メガネはつかっているうちにいろいろ歪みが生じてきますから、
ときどきメガネ屋に行って直してもらいます。
どこでもいいとは思いますが、
なんとなく買った店に持っていきます。
すると、
フレームの歪みを直してくれるだけでなく、
レンズのくもりを取り除いてくれ、
だけでなく、
鼻にあたるところの二個の部品まで
取り換えてくれました。
すべてタダ。
鼻にあたるところの二個の部品を、
パッド(鼻あて)
というそうです。
こういうとき、
インターネットは便利。
「メガネ 鼻にあたるところの部品の名称」
で調べられますから。

 

・新涼や皺に目が行く同期会  野衾

 

記憶を食べる

 

・新涼の碧の風の渡りけり

 

同期会の帰りに青りんごを買って帰宅したものの、
その日は腹がふくれており、
急ぐ必要もないので、
たのしみは翌日へ持ち越すことに。
日が改まり、
今度は弟が青りんごをたずさえやって来ました。
ありがたし!
事前にメールし、
青りんごのことを尋ねていたのでした。
前日わたしが買ったのと合わせると
4+5=9
帰省のあいだ食べ続けてもじゅうぶん間に合います。
ウッシッシ。
というわけで、
よく水洗いし皮ごとガブリ!
さらにガブリ!
ガブリ。
ガブ。
ふむ。
はて。
もひとつガブリ。
む、む、む、
こんな、
あじ、
だった、
か?
もうちょっと、
なんというかこう、
もう少し…
つまり、
記憶のなかの青りんごとあまりにちがいます。
横浜に帰る日の朝まで
「ちがうちがう」を唱えつつ
連日食べましたが、
記憶と現実の断層を埋めることは
とうとうかなわず終ってしまいました。

 

・新涼や鳥海山に雲かかる  野衾

 

青りんご

 

・首に来て首を離れぬ残暑かな

 

8月11日同期会の日、
電車で乗り合わせた同期の友人を先にやり、
わたしはひとり、
秋田駅一階の産直市場・みんなのやさい畑に直行。
青りんご、青りんご、青りんご、と。
ぐるぐるぐるぐる探していたら、
あっ、
あったー!!
四個入りがビニール袋に入って350円。
二袋あるではないか。
店の人に、
「これは青りんごですか?」
「そうです」
「青りんごですね?」
「そうですよ」
「ここは何時までやっていますか?」
「七時までやっております」
「七時までやってるんですね?」
「はい。七時まで」
同期会にビニール袋に入った青りんごを持って
というのもいかがなものか
と思い、
閉店時刻を確認し会場へ。
たのしく愉快な同期会が終るやいなや、
二次会に誘われるも決然と断り、
秋田駅へ直行。
産直市場、産直市場、産直市場、
呪文のように。
ん!?
あ、よかった!
ひとふくろだけ残っていました。
今年のテーマの青りんご、
ようやくゲット!
食うぞー!!

 

・還暦の祝ひ賑はふ涼しさよ  野衾

 

お盆

 

・艸の香と土のにほひや夏の朝

 

きょうは九日。
七日の朝、秋田に電話をしたら、
父と母は四時に起きて祖父母が眠る墓地へ行き、
墓を掃除してきたとのことでした。
村のほかの方たちも
つぎつぎ掃除に訪れたそうです。
墓地の掃除が終わって家に帰り、
今度は仏壇。
きれいに掃除をし、
年に一度の御霊を迎えます。

弊社は、8月10日~15日夏季休暇といたします。
よろしくお願いします。

 

・夏草や雨にたたかれ尚かほる  野衾

 

書名は難しい

 

・罅割れて塩噴く夏や石の段

 

かつて弊社から『面白南極料理人』を出したことがありました。
その後、
堺雅人主演の映画にもなり、
おぼえておられる方がいるかもしれません。
創業間もない弊社にとりまして、
かなり売れた部類の本でした。
取次、書店からの注文も多く、
なかには、
「めんしろなんごくりょうりにん」
「めんぱくなんごくりょうりにん」
など、
思いもしない読み方をされたり。
いまとなっては
なつかしい思い出。
このごろの例でいいますと、
『石巻片影』→「いしまきかたかげ」
『松本清張の葉脈』→「まつもとせいちょうのはみゃく」
が出色でしょうか。
漢字の読みは、
げに難しく、
注文を受け、
はてそんな本を出していたかしらと、
意表を突かれることもあります。

 

・罅割れて汗噴きだすや石の段  野衾

 

動物園

 

・骸かと摘まめば勁き蟬の羽

 

父と母は三十代ですかね。
わたしはたぶん小学生、
弟は幼稚園生か、
まだか。
動物園はそのころ千秋公園にありました。
砂利道を歩いて行った記憶があります。
昼を食べてからだったか、
動物たちを見てから
昼にしたか、
弟は中華とラーメン、
中島のテッチャもいたかもしれず、
父と母が、
わたしと弟を動物園に連れていってくれたことが、
おもしろいと思います。
いま尋ねたら、
なんて答えるでしょう。
もう昔のことで分からない、
それとも、
あたりまえのことを訊くな、
か、
わたしと弟を
動物園に連れていってくれたことが、
不思議におもしろいと思います。

 

・雲の峰村を出てから五十年  野衾

 

森鷗外訳『即興詩人』

 

・遮断機の先やゆらりと夏の海

 

朝、
コーヒーを淹れながら少しずつ読んでいるアンデルセンの
『即興詩人』
訳者は森鷗外。
文語文で書かれており、
すらすら読むことは叶いませんが、
こころを落ち着け
ゆっくりすすむと、
物語の世界が静かにひらけてくるようです。
口語文と比較し、
内容を理解するのに手間取るのに、
なぜあえて文語訳をえらぶかといえば、
ひとつにはリズム。
つい音読してしまいます。
無駄を省いた文語のリズムが心地よく、
からだ全体に響いてきます。
画家で絵本作家の安野光雅さんが一時
文語文に嵌ったことがあった
そうですが、
むべなるかな。
さて、これからコーヒーです。

 

・青々と息深くなる雲の峰  野衾

 

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