中途半端の味

 

本の増殖いかんともしがたく、
本棚に二重三重に本が置かれるようになると、
アップアップし、
探すのにひと苦労、
いや、
ふた苦労。
いつしか汗だくに。
ではありますが、
負け惜しみの言と知りつつ言わせてもらえば、
中途半端を嫌い
あまり整頓しすぎると、
読んでいないのに
なんとなくひと仕事終えた気がしてき、
やれやれ、
コーヒーでも飲むか、
なんて。
やがてすっかり本の存在すら忘れてしまいかねません。
なので、
適度な整頓は大事だけれど、
中途半端も味と知り
ほどほどな乱れも肝要なようで、
やりすぎはやはりよくない。
敬愛する精神科医の中井久夫さんの本に、
本は一気に読んではいけない、
なぜならすぐに忘れてしまうから…。
たしかに!
整頓についても、
同じことがいえそうです。
ちなみに、
「整理」が不要なものを捨て、
要るものだけを残す意を含むのに対し、
「整頓」は、
必要なものを使い勝手が良いようにならべ片付ける意
であるとか。
つまり整頓の前に整理あり。
記号で示すと整理⇒整頓。
とは言い条、
整理と整頓、
どっちもむずかしいんだなぁ。

 

・夏の陽や看板歪む隷書文字  野衾

 

セブン、ローソン、ばすけっと

 

保土ヶ谷の自宅周辺にもいくつかコンビニがありまして、
週日、土日にかかわらず
よく利用していますが、
割と短期間で
店内のレイアウト、品ぞろえが変わるのを見、
いろいろと勉強させられます。
またたとえば
セブンイレブンならセブンイレブンでも、
場所によって
地域の新鮮な野菜を並べている
ところもあれば、
そうじゃない店もある。
けして奇抜さを狙うわけでなく。
利用者が潜在的に
何を望んでいるかを常に見極めようと努力し、
ある判断から行っているのでしょう。
きめの細かい市場調査のなせる業か。
商売のコツを学び、知るには
ビジネス書を開くより
身近な実地のコンビニが一番。

 

・この頁に来て留まりぬ夏の蝶  野衾

 

有働さん

 

土曜日だったと思いますが、
テレビを点けたら、
有働さんがでていた。
NHKを辞めてから初の民放出演とのこと。
日本テレビ系『開局65年記念番組 日本テレビ+ルーヴル美術館「その顔が見たい!」』
タイトルはいかめしいのですが、
なんとなくユルイ感じ、
そこはなんといっても民放ならでは。
NHKとはちがいます。
そんなことよりも、
有働さん。
日本を離れ、フランスの空気を浴び、のびのび、はつらつ。
見ているうちに、
あれ、
この雰囲気、このノリ、この声、この元気、
なんとなく
だれかに似ている。似。
だれ、だれ、
だれかな、
だれだろう??
んーー、
ん!
そうか。
イモト、イモトだ!
似ている。
イモトと並んだらきっと、
おねえさんと妹みたいだろうなぁ。
並んでくれないかなぁ。
そんでそんで、
イモトのあの太い眉、やってくんないかなぁ。
有働さんなら、
おもしろがってやってくれそう。

 

・子ら燥ぐ組っこ集まる早苗ぶり  野衾

 

色の名、名の魔法

 

この日記の下に写真を一枚載せるようにしています。
花あり、木々あり、食べ物あり、
街で見かけた変なもの、
いろいろですが、
写真を撮ろうと思って立ち止まるとき、
なによりもまず色に目がいきます。
歌を聴くとき、
歌詞よりもまず音に耳がいくように、
モノを見るときは色。
このところ、
『日本の色図鑑』(吉田雪乃 監修 松尾ミユキ 絵)
を読んだり、眺めたりしています。
「はじめに」「目次」「INDEX」奥付をのぞき全頁フルカラー!
目次をひらくと、
紅梅色から始まり、桃色、桜色、……
灰色、胡粉色、墨色まで
88の色の名が取り上げられています。
「目次」「INDEX」を参考にして本文を開けば
右側のページにその色が印刷され、
下に小さく、
CMYKの文字。
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、
つまり印刷で
どのインクとどのインクを
どのように組み合わせるとその色を表現できるかを教えてくれています。
左のぺージには、
色の説明が短すぎず長すぎず施され、
さらに関連色を三色紹介。
ということは、
88色×(1+3)で、352色。
数の多さに目をみはります。
ですが、
日本の伝統色には諸説あるとのことですからさらにビックリ。
色の名を知ることは世界を知ること。
『ゲド戦記』では、
立派な魔法使いになるためにまずしなければならないのは、
モノの名前を知ることでした。
砂ひとつぶひとつぶ、
本当は名前がちがっている。
モノの名を知らなければ魔法をかけられない。
魔法使いになることは
なかなかむずしいけれど、
色の名を知り、
その名のもとになった風物を知ることで、
歌を詠い、詩をつくることはできる。
また、
つくられた歌や詩を楽しむことも。
この本には「山吹色」も取り上げられていますが、
たとえば松尾芭蕉の
「ほろほろと山吹散るか滝の音」
が色の名を知ることで、
山あいの風景のなかに
山吹のあの黄金のようなあざやかな黄が浮かび上がり、
清冽な滝の音がいまここに聞こえてくるようです。
むかしのひとが作った句を眺め
共感するというのも
一つのたいせつな魔法かもしれません。
ゆっくり何度でも楽しめる本です。

 

・散歩道茉莉花の庭雲流る  野衾

 

オンナ寅さんが行く

 

九州への出張を終え、
クスノキのテーブルを囲んでの報告。
報告者は専務イシバシ。
A4判のコピー用紙3枚に
臨場感あふれる営業日誌+旅日記。
わたしはこれが楽しみだ。
20年の間に
「春風社」のイメージがいかに様変わりしてきたか、
それをリアルに知ることができる。
報告の内容はもちろんだが、
話しぶり、
声のトーンから、
大学の先生方をはじめ
業者の方々が
どのように彼女を迎えてくれたのかがしのばれる。
子の精神状態を
話の中身よりも声質から
親が判断するのに近い
ところがあるかもしれない。
専務イシバシ
きょうからは弘前入り。
第52回日本文化人類学会参加のためだ。
週明けの報告がまた楽しみ。

 

・ジーンズに合わせる色を衣更え  野衾

 

事実と言葉

 

昨日の党首討論をテレビで知り、
はやらない現代劇を見せられているような
不思議な感慨を覚えました。
野党の四人の発言は、
どれも
言葉によって
その背景にある事実に迫ろうとしている。
その意味で、
極めてオーソドックスな言葉の使い方であると感じます。
言葉の「こと」が
事実の事「こと」と通底しているとすれば、
当然のことともいえましょう。
一方の安倍総理。
事実と裏腹の関係にあるはずの言葉を、
事実から切り離し
無化させ、
肉体を持たぬ言葉を
これでもかというぐらい
極限まで推し進め、
空中に四散させ
躍らせる。
「音楽というのは一度奏でられると、空気の中に消えてゆき、
二度と取り戻すことはできない」
と言ったのは、
ジャズのエリック・ドルフィー。
安倍総理の言葉も、
つねに空気の中に消えていくようです。

 

・脱ぎ捨てて乳房晴れ晴れ夏来る  野衾

 

清新の気

 

たとえば
懐奘が書いた『正法眼蔵随聞記』、
永島忠重が書いた『奥邃先生の面影と談話及遺訓』、
代田文誌が書いた『鍼灸眞髄』
などを読むと、
師の天才ぶりを
弟子が尊敬のこころをもって記し
余すところがないと感じる。
師とは、
道元であり新井奥邃であり澤田健だ。
人生の極意は
文字や言葉では伝えられない
と考えているらしいのも天才の天才たる所以か。
そうしてみると、
新約聖書も
弟子が書いたイエス・キリストの
言行録であり、
読んでいて感じる清新の気は、
上記の本と共通している。
ただ、
天才といえども人間で、
イエス・キリストを天才とよぶのはすこし憚られるけれども。
もっと大きな世界がある、
と感じさせてくれる
ところもまた共通している。

 

・夢の中欠くるもの無し夏野かな  野衾

 

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