動物園

 

・骸かと摘まめば勁き蟬の羽

 

父と母は三十代ですかね。
わたしはたぶん小学生、
弟は幼稚園生か、
まだか。
動物園はそのころ千秋公園にありました。
砂利道を歩いて行った記憶があります。
昼を食べてからだったか、
動物たちを見てから
昼にしたか、
弟は中華とラーメン、
中島のテッチャもいたかもしれず、
父と母が、
わたしと弟を動物園に連れていってくれたことが、
おもしろいと思います。
いま尋ねたら、
なんて答えるでしょう。
もう昔のことで分からない、
それとも、
あたりまえのことを訊くな、
か、
わたしと弟を
動物園に連れていってくれたことが、
不思議におもしろいと思います。

 

・雲の峰村を出てから五十年  野衾

 

森鷗外訳『即興詩人』

 

・遮断機の先やゆらりと夏の海

 

朝、
コーヒーを淹れながら少しずつ読んでいるアンデルセンの
『即興詩人』
訳者は森鷗外。
文語文で書かれており、
すらすら読むことは叶いませんが、
こころを落ち着け
ゆっくりすすむと、
物語の世界が静かにひらけてくるようです。
口語文と比較し、
内容を理解するのに手間取るのに、
なぜあえて文語訳をえらぶかといえば、
ひとつにはリズム。
つい音読してしまいます。
無駄を省いた文語のリズムが心地よく、
からだ全体に響いてきます。
画家で絵本作家の安野光雅さんが一時
文語文に嵌ったことがあった
そうですが、
むべなるかな。
さて、これからコーヒーです。

 

・青々と息深くなる雲の峰  野衾

 

早起き

 

・夏の朝戯れ来たる雀かな

 

体調が旧に復しつつありまして、
それに連動し
起床も日に日に早くなり。
パソコンに向かいしばらくこうしていると、
この時間もふつうでなく、
いただくもので。
安息もごはんもいただきます。
きのうのビール、
美味かった。
青島ビール。

 

・納豆の糸ひく如し蟬の声  野衾

 

大雨時行

 

・立ち漕ぎの自転車揺れる蟬しぐれ

 

今週七十二候では、
大雨時行。
たいう ときどき ふる。
その暦どおり、
きのうの午後から夜にかけ、
関東では大雨が降り。
きょうは八月二日。
お盆がだんだん近づいてきます。
お盆といえば、
『お盆の弟』
監督の大崎さんを見かけました。

 

・来ないねだれもそのうち来るさ雲の峰  野衾

 

蟬しぐれ

 

・夏深し空ぐるぐると鳶の声

 

種類はそんなに多くないと思いますが、
おそらく
数十匹の蟬の声が入り乱れ、
朝からとてもにぎやかです。
音のシャワーのようでもあり。
空を蔽うドームのようでもあり。
一匹の蟬はうるさくても、
数十匹、
数百匹となると、
不思議にうるさい気がしない。
こんな感じかな閑さは。
きのう、
ベランダに油蟬でしょうか、
ころんと死んでいました。
蟬の死骸はいかにも軽く、
これにいのちが宿っていたとはとうてい思えません。
そう考えると、
いのち丸ごと鳴いている
ようでもあります。

 

・鵠沼やミルク金時匙を嘗む  野衾

 

木目

 

・秘所までも夏日に曝す真蛸かな

 

整体の日。
いま話題の鵠沼海岸まで。
一昨日『出没!アド街ック天国』で紹介されました。
ネルとジャスも迎えてくれます。
施術を受けるベッドには
穴が開いており、
うつぶせになったとき
そこに顔を嵌めると苦しくありません。
穴の下に板張りの床が見え、
木目が見え、
目をぱちくりさせ。
たとえば雲は
実際に刻々と形を変えますから、
見ていて飽きません。
雲とちがって床の木目は
形を変えません。
が、
じっと見ていると、
あれ?
ただの波打つ木目が、
口笛を吹きながら空を駆ける痩せ馬だったり、
うずくまるオオカミだったり、
とてもとて~も細長いクジラだったり。
……………
はい。それでは仰向けになってください。
はい。

 

・目覚めての寂しさつのる昼寝かな  野衾

 

小説の時間

 

・夏草や折れた鎖骨は遠位端

 

朝はひきつづきハンス・ヘニー・ヤーン。
プルースト、ジョイスはもちろん、
トルストイ、バルザック、
源氏物語でも、
最初のページから
血わき肉躍る
なんてことはまずない。
むしろそれがいい。
おもしろくないのがおもしろい!
なんて。
いや、
強がりでなく。
しているうちに、
ダリの時計の絵のように時間がぐにゃりと歪みはじめます。
このぐにゃり感がえも言われない。
物語のおもしろさとはまた別な気がします。
小説の時間が
現実日常の時間とパラレルに
同等の、
ときに、
それ以上の厚みをもって走るには、
ある長さが必要です。
一か月、二か月、
半年ぐらいだと尚いっそう。

 

・遠位端夏の涙の乾きけり  野衾

 

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