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よき眠り

 

・三月や野中の電車ぴーぽっぽ

行きつけの鍼灸院の先生曰く、
「ほとんどの病気は、眠れば治ります」
ずいぶんな極論とも思われますが、
考えてみれば、
眠れるということは健康の証。
どこかに不具合があると、
眠りたくても眠れません。
深い眠りは日々のクスリ。
そうなると、
掛け布団、敷布団、シーツ、枕が重要になってきます。
深く眠った後の目覚めは、
雨をたっぷり吸いこんだ大地のように、
いのちの芽吹きを促してくれます。

・姿より匂ひ先来る沈丁花  野衾

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週刊朝日

 

・春の風仕事忘るる心地せり

今週発売号の週刊朝日コラム「暖簾にひじ鉄」で
内館牧子さんが
拙著『石巻片影』を取り上げてくださいました。
「無力な子供たち」というタイトルで、
拙著の中から、
ツバメの子を撮った写真と文章、
石巻グランドホテルのロビー前でたたずむ少女の写真と文章、
その二つを具体例にし、
ちかごろ東京都昭島市で起きた凄惨な暴行事件と重ね、
「ヘルプレス(=無力)な人間の子は、
人間に育てられて初めて人間になる」
と結ばれています。
拙著に収められた写真はすべて橋本照嵩さんによるものです。
ありがたかったのは、
「多くの方々は「石巻」と聞くだけで、
震災からの復興の本だなと思うだろう。
そうではあるのだが、そうだとも言い切れない」
の文。
この震災は千年に一度ともいわれました。
それならば、
物心ついてから見聞きし、
学んできたことが、
この度のことと対峙し得るのか、
吹っ飛んでしまうのか、
吹っ飛んでしまったのなら、
また一から学び始めよう、
そのことを考えていたからです。
週刊朝日と併せ、
拙著を読んでいただければ嬉しいです。

・地下鉄や車中花粉の鼻爛漫  野衾

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美智也の声

 

・鶯や目覚め寝床の薄明り

所用のため二泊三日で秋田へ行ってきました。
その折、
「うだっこ」の好きな両親へ聴かせようと、
三橋美智也が
昭和の歌謡曲をカバーした4枚組セットの内から
1枚えらび持参。
家に着いてさっそく掛けたところ、
案の定父は、
流れる歌に合わせて歌い始め、
相変わらずの美声に驚きもしましたが、
ななんと、
恥ずかしがり屋の母まで
口を開いて歌っているのです。
わたしが家にいた間、
5、6回は通しで掛けたでしょうか。
母がぽつりと曰く、
「このひとのこえ聴げば、めんどうみでもらえるような気がする…」
なるほど!
やさしい声というのなら分かる、
めんどうみてもらえるというのは尋常じゃない。
しかし、
天才美智也の声の評としては、
実に的確という気がしました。

・行き交ひの挨拶楽し春となる  野衾

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鶯も

 

・節くれの父の指先春日かな

畏友渡辺くんの俳句に、

・鶯も練習すれば上手くなる

というのがありまして、
そうかなあ? 鶯が練習するかなあ?
と訝しく思っていましたが、
鶯本人が練習という意識があるかどうかはさて措き、
鳴き始めは確かにおぼつきません。
ここ保土ヶ谷御殿山では、
先週末より鶯が鳴き始めました。
なんとも頼りなげ。
ホ、ホ、ホケ、キョキョ。
これからだんだん稽古を重ね、
美智也の高音に引けを取らぬような
いい声で鳴くことでしょう。

・父歌ひ母が和するや春うらら  野衾

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横浜水信

 

・猫停まりまた歩き出す春の朝

よこはまみずのぶ。
大正四年といいますから1915創業、
フルーツのお店。
桜木町駅北口をでてすぐのところにもあり、
先日そこでイチゴミルクのジュースを飲んだとき、
メニューに、
メロンジュース800円
とあったのが妙に気になり、
昨日、
店に入って頼んでみました。
「メロンのジュースをください」
窓際の椅子に座って待っていると、
中で何やらシャカシャカ音。
まもなく、
「マスクメロンジュースでございます」
ん?
メニューは「メロンジュース」だったのに…?
そうか。
季節によって種類が違うということか、
な?
ともかく。
ズル(ストローで飲む音)
あっ!
マスクメロンの味だ~~~!!
こ、こ、これは!
生き返る心地がしたのでございました。

・春眠や時間ぎりぎり湯を出でぬ  野衾

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三浦衛(みうら・まもる) 春風社代表にして自慢大王&悪ノリ大王。体調のいいときは自らを天才と称し、不調の折はちりあくたにも劣るヤツとしょんぼり。

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三浦衛の本


『カメレオン』
 三人ときどき声にならぬ声を洩らし/とろけ とろけ 唾までとばし/クヂるとナメるとネヂるとチョす…(「鳶」) 自在に色を変え、不意に突き刺さる、軽妙なことばの戯れ。秋田方言満載の詩集。本文は金属活字による活版印刷。


『マハーヴァギナまたは巫山の夢』
 三平佐世夫は、千一夜の夢うつつで女と戯れ、印度に旅し、睾丸を抜かれ、鰐を飼い、横浜を彷徨う。言語の崖っぷちを綱渡りする、めくるめく冒険。本文活版印刷に美麗造本を施した平成の大奇書。


『父のふるさと』
 父の目に映じた故郷の風土、ひと、くらし、農事を、愛惜をこめ描きだす。本文は金属活字による活版印刷。「身と蓋函」に納める。


『出版は風まかせ』
 横浜の出版社「春風社」社長が本づくりと会社経営にまつわるエピソードを豊富におりまぜ、創業から10年を振り返る。