意識が旅する物語

 

ヘーゲルの『精神現象学』にはそんなことが書かれています。
旅するのは芭蕉やゲーテや、
それからとにかく
ニンゲンに決まっている
かと思いきや、
この本では
ニンゲンの意識が主人公で、
いろいろと遍歴の旅を重ねていきます。
意識を意識する自己意識、
みたいな。
むずかしい哲学書として
つとに有名ですが、
そんなにむずかしいのなら、
哲学学徒ではないのだし、
あえて読む必要はないだろうと高をくくり
読まずに来ました。
が、
来月に予定しているトークイベントのテキスト『沢田流聞書鍼灸眞髄』
(医道の日本社)を読んでいましたら、
漢方では、
心臓と腎臓をあわせて精神と呼ぶ
との記述が
なんどか登場し、
へ~、そうなんだと
目から鱗が落ちるようでありました。
そうなると、
待てよ、
ヨーロッパではどうなんだ?
の疑問がもたげ、
精神といえばヘーゲル、
ヘーゲルといえば『精神現象学』
という連想から、
未知谷からでている牧野紀之訳のものを読むことになりました。
なるほどやはりむずかしい。
好ましいのはこの訳者のスタンスで、
ライフワークでヘーゲルをやってきたニンゲンでも、
分からないことは分からないと
注ではっきりそう書いてある。
ご本家ヘーゲルにまでツッコミを入れたり。
ヘーゲルのこういうところが悪いクセ
だとかなんとか。
事程左様に、
牧野紀之さん、
そうとうの個性の持ち主とお見受けしました。

 

・みだれ飛ぶ梅雨の終りの烏かな  野衾

 

夢のはなし

 

眠りが浅かったせいか、
テレビで見るような有名人が夢にでてきました。
ひとり目は、
プレバト!!でよく見るフジモンこと
藤本敏史さん。
近場をふたりで歩いていました。
どんな話をしていたかまでは覚えていません。
ふたり目は、
ことし二月に亡くなったドナルド・キーンさん。
お目にかかったことはありませんでしたが、
夢のなかでは、
落ち着いた雰囲気の部屋で目の前にキーンさんがいます。
キーンさんが
耳が遠いかもしれないと勝手に判断し、
わたしは通常よりも大きな声で話しかけているようでした。
キーンさんの『日本文学史』がおもしろかった
と告げるや、
キーンさんは何とも言えない嬉しそうな表情になり、
わたしもうれしく思いました。
と、
ミッテラン大統領からもらったという絹のマフラーをわたしに譲ってくれました。
夢ではそうなっていましたが、
なんでいきなりミッテラン大統領なのか、
なんで絹のマフラーなのか、
じぶんの夢なのに、
とんと理解できません。
なんとも不思議。

 

・真夜中のサイレン高き熱帯夜  野衾

 

こういうこともあります

 

日曜日でしたかね、
テレビを点けたらジャパネットたかたが
取扱商品の説明をしていました。
テレビに向かって左が女性、右が男性、
いつもの通り。
このごろテレビでの放映がとみに増えた気がします。
サンダルのことを宣伝していました。
日本の職人が開発したとかで、
いかにすぐれているかを
微に入り細を穿つようにしゃべっています。
もともとすぐれたものとして定評のあったもの(仮にAとします)
にくらべ、
ジャパネットたかた仕様に開発してもらったもの(仮にBとします)が
どの点でバージョンアップしたかを
ていねいに説明、
サンダルの裏の加工も従来のものと異なり、
さらに滑りにくくなったと。
「実験してみましょう」
ということになり、
ツルツルした木の板の表面に霧吹きで水を吹きかけ、
その上にAとBのサンダルをのせ、
板の両端を女性と男性が持ち、
少しずつ傾けていきました。
けっこうな角度まで傾斜しましたが、
AもBも滑り落ちません。
と、
一瞬のことでした。
Bのサンダルがツーと先に落ちました。
アッ!!
わたしはテレビの前でちいさく声を漏らしたかもしれません。
生放送ですから
ジャパネットの二人も驚いた様子。
男性がすかさず、
「こういうこともあります」
とフォローし、
さらに説明を加えていましたが、
「さっきのことは忘れて」
とか言って、
さすがに動揺は隠せない様子でありました。
いやぁビックリ!
しかし。
ふむ。
あれも含めて演出だったとしたら…
いくらなんでも、
あれはやっぱりハプニングだったと思います。
いや待てよ…

 

・梅雨明けてサンダルの海開けにけり  野衾

 

夏本番

 

保土ヶ谷の山の上に住んでいるため、
いろんな生き物がつぎつぎあらわれ目を楽しませてくれます。
数匹いる野良猫はしょっちゅう
わが物顔にベランダを通っていきます。
巣づくりの場所を求めているのか、
スズメバチがこのごろよく飛び交っています。
そしてカナヘビくん。
ムカデはこのごろ見かけなくなりました。
その代わりのようにあらわれたのが
ゲジゲジ。
朝、部屋の壁をつたわってゲジゲジしているのを発見。
いやぁ、驚いたのなんの。
さてきのうのことです。
いつものように
お気に入りのソファに腰掛け
本を読んでいました。
と、
視界の上部にほんの小さな黒い点がうごいた気がしました。
本のページから目を離し、
小さな点のうごくほうへ目を向けました。
しずかにこちらへ向かって歩いてきます。
ゴキブリか!?
あたまにのせている眼鏡をもとにもどしてよく見ると、
黒い小さな生き物が
ゆっくりゆっくり歩いています。
よわったゴキブリ?
とも一瞬思いましたが、
どうもそうではない。
ソファから立ち上がり
二三歩あるいて窓を開けてみました。
ん、
カブトムシ!
カブトムシだ。
メスのカブトムシ…。
いよいよ夏。
夏本番!

 

・すれちがふ白服四人(よたり)娘らの声  野衾

 

カナヘビくん

 

先日ベランダにあらわれたのと同じカナヘビだと思います。
数日しか経っていませんから、
あいかわらず小さい。
ちょろちょろちょろちょろしています。
しっぽが青くきれいなので
つい見とれてしまいます。
エアコンを除湿にセットしていると、
室内の水分がかたまりとなって外に流れますが、
その水に近寄り
飲みはじめました。
しばらくすると、
あたまをあげ
おおきくのけぞらせ、
いかにも美味しそうです。
またあたまを下げて、ふたくちめ。
やがて満足したのか
ちょろちょろ這って暗いところへすがたを隠しました。

 

・かなへびの喉しめらせて水しずか  野衾

 

サルバドール・ダリ

 

中学校の美術の教科書にのっていたのを見た
のが最初だったと思います。
「記憶の固執」
なにか四角い大きなものの角に置かれた時計が
くにゃりと曲がり、
枯れ木の枝にも時計がかかっていて
こちらも二つ折りみたいにやわらかい。
好きでも嫌いでもなく、
ただなんとなく印象にのこった気がします。
思い出したのはわけがありまして、
自宅で使用している
マウスパッド。
革製品をあつかう店の外に「どれでも五百円」で売っていた
革の切れ端を買いました。
けっこう大きかったので
てきとうにハサミで切ってつかっています。
それが下の写真。
それを見て
アッ!
思い出したのでした。

 

・ダリの時計くにゃりくにゃりの大暑かな  野衾

 

カラスの声

 

目が覚めてから数分、
ながければ一〇分ほど起きずにじっとしています。
と、
そとでカラスの声。
一羽のこともあれば、
遠くでさらに一羽、二羽の声が重なることもあります。
雨模様、あるいは
すでに降り始めている日のカラスの声
というものは、
なんともけだるく重苦しい。
デレ~、ドロ~、ダラ~、
そんな感じ。
こっちまで。
けさはそれほどでもなく…
いよいよ梅雨明けか!?

 

・五月雨を塩辛声の烏かな  野衾