小説の効能
仕事柄、学術書を読むことが多く、個人的にも好きなものですから、
むつかしくて、どれだけ理解できているか心もとないのに、
わたしなりの小さい発見があったりすると、
ああ、きょう生きてて良かったなぁ、
と思える瞬間がたまにあり、
椅子の横に、
ついつい、
その類の本がつみ重なっていきます。
そういう日常のなかで、
いろいろ思考が折り重なった結果、ここひと月ばかり、
小説を読んできました。
ディケンズさんとオースティンさん。
月並みですが、
小説は、いいなあ、って思いました。
笑ったり目頭を熱くしながら、
こころの凝りがほぐれていくと申しますか、とかされていく感じ
とでもいうか。
だいぶ前になりますけれど、
しりあがり寿さんの漫画を読んだとき、
そのなかに、
歳をとると、しょっぱくなる、みたいな文言があった
と記憶しています。
しりあがりさんのことばを借りれば、
小説は、
しょっぱくなった老いの塩気を薄くしてくれる
ようにも思いますので、
眉間に皺を寄せないためにも、ときどき小説を読もうと思います。
・万象が薄むらさきの四月かな 野衾