ピンクのランドセル
きのうのことです。朝のルーティンを終え、コーヒーカップを持ち、
ぼんやり外を眺めていたら、
ランドセルを背負った少女が、坂を下りて行きます。
少女がどこのどなたか知りませんが、
彼女が背負っているピンク色のランドセルは、数年前から目にしていますから、
よく知っています。
かわいいピンクのランドセル。
初めて目にしたのは、
小学校に入学したときだったかもしれません。
小走りで坂を下りて行くと、
ランドセルがユッサユッサ、逆さの小さな放物線を描いて揺れますから、
その逆さ放物線のかたちが笑ったときの人の口元
に見えたものです。
はは、ピンクのランドセルが笑っているよ!
以来、何度見たでしょう。
見れば、
これから学校か、と、送り出すような気持ちになりました。
きょうの授業は何かな?
好きな教科は?
コロナのときはどうだっただろう。
休校になったことがあったかもしれない。
彼女自身はどうだったでしょう。
コロナの猛威が一段落し、
友だちとも笑って会えるようになったかな。
昼休みにドッジボールをしてるかな。
きのう、
ピンクのランドセルを目にしながら、
いろいろ想像がふくらみました。
少女の背は高くなり、
ランドセルは、左右に揺れることなく、
ピッタリのサイズ感で少女の背に負われ坂を下りて行きました。
・暁烏鳴く蕭条に花の雨 野衾