GWの後半、3日からきのうまで帰省しました。
92歳の父と88歳の母は、日々の一つ一つの行い、判断に奮闘しています。
歩行が困難になった母が、
お尻を床にズリズリさせながら進む姿は、
かわいそうでありますけれど、
賢明なこころの形を無言で示してくれているようです。
わたしの半生を振り返るたびに思うのは、
小学四年生のときに、
母が買ってくれた夏目漱石の『こゝろ』のこと。
のちに、
どういう理由から、どこで、
ほかの本でなく、なぜその本にしたのか、母に尋ねたことがありますが、
母は、一切記憶していませんでした。
夏目漱石がどういう人物なのか、
おそらく母は知らないはず。
こたえのない問いであり、
ここに人生の不思議を感じるわけですけれど、
ほとんど終日、
ソファに座っているいまの母の姿は、
本人も意識しない、
「こころ」そのもののようにすら思います。
たびたび体をねじり、
ソファのすぐ後ろの障子を開け、
外の景色を見やる姿は、かぎりなく少女に近づいていくようです。
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よろしくお願い申し上げます。
・ふるさとの新緑や山々に雲 野衾