方言と古語

 

ゴールデンウイークの帰省中、気になった秋田のことばを三つ取り上げました。
三つ目が動詞の「あべ」で、
秋田県教育委員会編、無明舎出版刊の『秋田のことば』で調べてみたら、
それには、
「あべ」の終止形「あんぶ」(「ん」は小さく表記)について、
「歩(あゆ)む」。
「幼児が歩き出すことをいう」との記載があり、
先週金曜日の「よもやま日記」に書いたとおりです。
「あんぶ」が「あべ」になったのだな、
と思い、
いったんは納得したのですが、
こんどは「あんぶ」が気になりだした。
そこで、
佐伯梅友・馬淵和夫編、講談社刊の『古語辞典』をパラパラめくっていたら、
「あゆぶ【歩ぶ】」に出くわした。
いわく、
〔「歩む」の転〕あるく。歩む。「杖にかかりて、つかれ歩ぶ」〈今昔・一・三〉。
「あゆぶ」→「あんぶ」か。なるほど。
数年前、
伊藤博さんの『萬葉集釋注』を読み、
方言と古語の関係についていろいろ思いを巡らせることができ、
たのしい読書になりましたが、
今回も、
こういうかたちで古いことばが残っているのだな、
と腑に落ち、
小さい感動を覚えました。
子どもの頃から馴染んできたことばが、
古い日本語とリンクしていて、
不思議な感覚にとらえられます。
むかしのひとと心を共有しているようにも感じます。

 

・やはらかく桜蘂降る山の道  野衾