二季

 

 横須賀線春日の丘の湿りけり

桜の季節が終り、いよいよ新緑の季節かと思いきや、
気温はなかなかそうなってはくれず、
何十年ぶりかの雪が舞ったり、
かと思うと、いきなり夏日に滑り込んだりして、
体がついていきません。
このごろは、四季でなく二季になったみたい。
きのう、今日と、鶯が近くに来て鳴いています。
おかしいな、おかしいな、ほーほけきょ、
ほんとにおかしいな、ほーほけきょ、
とでも言っているようです。
五月は山菜シーズン、
天の神様お願いしますよ。

 屋根よりも低いじゃねーか鯉のぼり

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説でなく節

 

 横浜横須賀道路緑立つ

十五世紀にできたハングルによる
お釈迦様の伝記『釈譜詳節』ですが、
わたしはどうも節を説と書く(正確には打つ)
クセがありまして、よく間違えます。
訳者の河瀬先生から指摘され、
あ! いけねぇ! ということで、
この日記のバックナンバーを検索し、
すぐに直しました。
が、まだ直ってないところがあるかもしれません。
誤植は怖いです。
その『釈譜詳節』、今度は朝日新聞で紹介されました。
記事を書いてくださったのは、佐藤善一さん。
取材の模様をそばで聞いていたのですが、
的確な質問をし、
先生の回答をすばやくノートに記していました。
パパッと分かりやすく説明することの難しい本ですが、
そこを佐藤記者は実に分かりやすく
まとめてくださいました。
コレです。
河瀬先生の願いの実現に
少しでもお手伝いできたことをうれしく思います。

 春たけなわカップヌードル午後三時

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経験をつむとは

 

 プチトマト添へて春日の角煮かな

人間は若いときに生えっぱなしにしておいた
雑草をとりのぞくのに、
一生のかなりの部分をすごす。
この作業がいわゆる経験をつむというものさ。

上の言葉は、
バルザックの小説『幻滅』(田村俶訳)に出てくる
カルロス・エレーラが、
自殺の場所を求めて歩いていたリュシアンに語るせりふ。
『幻滅』ではスペイン人の僧侶として登場する
カルロス・エレーラだが、
実は、同名の僧を殺してその人物に成りすましている
脱獄囚のジャック・コランである。
『ゴリオ爺さん』ではヴォートランとして登場していた。
悪の権化みたいな人物だが、
(それだからこそ)
こいつが出てくると、
物語がやたらワクワクしてくる。
この男に、おのれのしでかしたことを恥じ
自殺寸前だったリュシアンは救われる。
人生は不思議!

 新緑やゴーと消えゆく横須賀線

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韓国メディアによる取材

十五世紀に作られたハングルによる釈迦伝であり、
韓国の古典文学としても名高い『釈譜詳節』の
日本語訳(三巻予定しているうちの今回は上巻)を
今月刊行したところ、
韓国メディアがさっそく
訳者の河瀬幸夫さんを取材してくれました。
ありがたいことです。
ハングルを読める方は、こちらでどうぞ。

世界日報の記事
メディアブッダの記事

河瀬さんに、二つの記事を翻訳してもらいましたので、
日本語で読みたい方はこちらです。

世界日報の記事(日本語訳)
メディアブッダの記事(日本語訳)

人の話を聞いてまとめるというのも、
広い意味の翻訳ですから、
やはりむずかしく、
河瀬さんが話していないことまで
文字化している箇所もいくつかあるようです。
いずれにしても、
この度の仕事を偉業とし
衝撃をもって受け留めたであろうことは、
想像に難くありません。
中巻、下巻も、心してかかろうと思います。

アンジェラ・アキとフクロウ

 

 新緑や我も我もと親知らず

アンジェラ・アキという歌手がいます。
髪の毛が長く、黒縁メガネをかけています。
それぐらいの知識しかありませんが、
紅白歌合戦にも出ていたし、有名でしょう。
先日、朝、ぽけーっと
横須賀線の電車に乗っていたときのことです。
ハッと眼をみはりました。
髪の毛が長く、黒縁メガネをかけ、しかも、わし鼻。
あ! アンジェラ・アキだ!
よーっく見ました。
ちがっていました。
でも、実によく似ています。
きっと周りからも言われているのでしょう。
テレビで、○○似のひと集合、
みたいな番組がありますが、
そういうのに出たら、かなりいいところまでいくはず。
わたしが知らないだけで、
出たことがあるかもしれません。
自分でも、アンジェラ・アキに似ていると思って意識し、
こまかいパーツを似せているのじゃないでしょうか。
きっと、アンジェラ・アキが好きなのでしょう。
突然ですが、
わたしはフクロウに似ていると言われることがあります。
小さい頃ろからフクロウが好きなので、
うれしくないこともありません。
ちょっぴりうれしい。
でも、
どこがどんなふうに
フクロウに似ているかわかりませんから、
意識して、さらにフクロウに似せようと
努力することはできません。
それはそれでいいと思っています。

 カニチャーハンカニたっぷりの春日かな

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法隆寺

 

 春寒の雨首筋にゾロリかな

今月末、秋田が生んだ「異端の劇作家」青江舜二郎の
傑作戯曲「法隆寺」を刊行します。
青江のご子息で映画監督の大嶋拓さんとご縁ができ、
とんとん拍子に話がすすんで、
実現の運びとなりました。
「秋田さきがけ新報」に掲載された
『出版は風まかせ』の書評を監督が読んでくださったことが、
そもそものご縁の始まりでした。
「法隆寺」は、
聖徳太子は毒殺されたのだったかもしれないという
ミステリー仕立ての戯曲で、青江の代表作です。
しかも単行本化は今回が初めて。
これがスコブル面白い! ワクワクします。
戯曲の王道! 登場人物たちが生きて動いています。
ちゃらっと軽く読める作品ではありませんが、
腰を据えて読むと、深い味わいがあり、
静かな勇気をもらえることに気づくでしょう。
一昨日「秋田さきがけ新報」に
「法隆寺」に関する拙稿が掲載されました。
コレです。
「法隆寺」の刊行にあたり、
戦前の秋田の土崎を舞台にした「河口」も併録しています。
こちらも青江の代表作。
方言が多く出てきて、
秋田の人以外は最初戸惑うかもしれませんが、
話の流れから、
ははぁ~、こんな意味なんだろうなと、
類推しながら読めるはずです。
わたしはまだ実物を見たことがありませんが、
電子書籍でチャチャッと読むのでなく、
休日、紙の本でじっくりこういうのを読むのも
いいのではないでしょうか。

 ザクザクとキムチ頬張る春の宵

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保温力

 

 新緑や青空近し雨上がる

汗を掻くほど暑い日があり、
そうか、もう四月も半ばか、
と思ってTシャツにハイネックの薄手のセーター
といういでたちで出かけたら、
まだだれもそんな格好で歩いている人はなく、
そう思ったら、
なんだかブルッと寒気がしました。
いつものマフラーを巻いて出たので、
我慢できないほどではありませんでしたが、
マフラーがなかったら、
とても一日もたなかったでしょう。
マフラーを首に巻いているだけで、
一枚多く重ね着しているぐらいの保温力です。
着脱も楽だし。離せません。

 新緑を拝む我れに何もなし

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