板をつなぎ合わせる

 

英和辞書をしらべると、
codexは冊子本、
に対してvolumeは巻子本、つまり巻物。
製本上の用語で、
上製またはハードカバー、並製またはソフトカバーというのがありますが、
上製といい並製といい、
いずれも冊子本には変りありませんからcodexのはず。
ですが、
コデックス装という名称が別にあって、
どういうのかというと、
上製本の背の部分のボール紙がなく、糸でかがってあり、
どの箇所も開くとほぼ平らになる。
イメージとしては、
薄い板(=紙)を一枚一枚並べて隙間なくつなげたような。
ところで、
セネカさんの「人生の短さについて」
の文章のなかに、
カウデックスという単語がでてきて、元はこれかー、
と思いました。

 

ローマ人に船に乗ることを始めて勧めたのは誰であったか、
などを問題にする人々をも許してやることにしよう。
クラウディウスがその人であったと言い、
彼がカウデックスという異名をとったのは次の理由からだと言う。
昔の人の間では、
相当数の板をつなぎ合わせたものがカウデックスと呼ばれ、
そこから法律の広報板がコーデックスと言われた
からだというのであり、
また現在でも昔の言い方に従って、
ティベル河をさかのぼって食料を輸送する船はコーディカリア船、
すなわちカウデックスの板船と呼ばれている、
というのである。
(セネカ[著]茂手木元蔵[訳]『道徳論集(全)』東海大学出版会、1989年、p.256)

 

中国の竹簡、日本の木簡も、紐で結わえればコーデックス。
と。
本を読んでいて、
ときどき果てしない時間と空間を航海しているように感じられるのは、
本も船も、もともと、
板をつなぎ合わせたところが共通しているから、
かな?

 

・先生の名だけ覚えて入学式  野衾