ホーキンスの靴を新たに二足買った(自分の足にフィットすることを発見して以来二足ずつ買うのが習わし)ものの、古いのをすぐに捨てる気になれず、中敷きを換えて履いていた。
 先日雨の日に履いて外へ出たら、足の裏がジトーッと濡れてきた。ああ、とうとう来たか! と思いながら、路上で確かめるわけにもいかず、とりあえず会社へ向かう。出社後に脱いで裏返してみたら、靴底がペラペラになり一箇所破れているではないか。はあ、ここから水が漏れていたのか。ここまで履けば充分だろう。こんなふうになってはもう捨てるしかない。わたしはしばし感慨にふけった。が、会社のこととて新しいのに履きかえるわけにもいかず、仕方がないので破れ目にガムテープを十字に貼ってその日家に着くまで急場をしのいだ。きのう、ついに新しい靴を下ろした。茶色い靴。

風通し

 鎖骨を折ったせいで何かと不自由になったが、悪いことばかりではない。自分にとってこれは大事な節目かなと思う。せっかくこんなふうに思えるのだから、思うだけでなく、積極的に実践しようと考え実行することにした。何をしているのか。身辺整理。要するに、いろんなものを捨て始めている。
 今までと違った目で自分の部屋を眺めているうちに、それってどうなの? という気がしてきて、本当にこれって必要なの? とみずからに問いかけ、要らぬ要らぬ、えーい、捨てちまえ! ということになってきた。
 たしかポール・オースターの小説に、本を重ねた上にベッドが置いてあり、読み終えた本から順番に処分していく話があったと思うが、気分はどうもそんな感じ。だいたい今まで、一度読んだ本を読み返したことなど何回あったか。そう考えると、本棚に並んだ背文字を見て自己満足に浸っているだけのような気もしてくる。
 とにかく要らないものを捨てて風通しをよくしたい。事務所を自宅から引越し、自宅を自宅として使うようになった時にずいぶん広く感じたものだが、いつのまにか物が増え、垢のようになってしまった。今日はゴミの日、さて何を捨てようか。