人に愛

 ク〜ッ!! 究極のすごいタイトル! たしか中学校の体育館ではなかったかと思う。弟が今そこに勤めているから、訊けば教えてもらえるだろうけど、煩わせるのも悪いからあやふやな記憶で記すことにするが、そこに「天に星 地に花 人に愛」と揮毫された額が掲げられていた。短い文句だし、語呂もいいから、なんとなく憶えている。が、それにはもう一つわけがある。すこし違和感があったからだ。
 天を見上げれば(曇っていれば見えないけれど)必ず星がある。季節にもよるが地には必ず花が咲く。だけれど、それら二つと同じ並びで人には必ず愛があるといえるだろうか。人には他にも、もっといろいろ大事なものがあるはずだし、天=星、地=花のように、愛がなければ人ではない(ひとでなし)みたいな言い方は少しおかしくないか。思い出して整理すると、そういう違和感ではなかったかと思う。
 いまはどうかと言うと、子を持つ親も、そうでない者も、大事なことは愛することただ一つかなと思うのだ。『愛するということ』という哲学的な本もあるけれど、本に拠らずとも、たとえば「親切」ということだし、まなざし一つのこともある。
 ピナ・バウシュ・ブッパタール舞踊団の「ネフェス(呼気)」を観て感動し、チラシにあった言葉、「価値のある唯一の行為は愛することである。」に涙ながらに合点がいって、数日そのことをつらつら考えていたら、上の言葉を思い出した。その言葉がだれのものか先生から教えてもらった記憶はない。『友情』を書いた武者小路実篤の言葉だそうだ。