めおとピアノ

 海外の音楽を招聘する会社に勤める知人から案内があり、「カメラータ・ジオン(室内アンサンブル)と二人のハイドシェック」というコンサートに、武家屋敷、若頭といっしょに行ってきた。会場のみなとみらいホールまでは徒歩15分。
 連弾のピアノというものを初めて見た。エンジンを搭載すれば前にも後ろにも走り出しそうで、すぐに井上ひさしの近未来SF小説『吉里吉里人』に出てくる改造犬「往ったか来たか号」を連想。わたしだけが初めてなのかと不安になり、武家屋敷に問い質したところ、彼女も初めてとのことで安心(?)。
 ところで「二人のハイドシェック」というくらいだから、二人は夫婦。ヒデとロザンナのようなもの? そう? ちがう? ちがうか。あ、そ。それはともかく、仲の良いところを音で聴かせてくれるのかと思いきや、そうでもない。むしろ、あまり仲が良くないのじゃと邪推したくなる。ていうか、奥さんのターニャさんは夫に合わせて弾いているようなのに、夫のエリック君がどうも変。勝手。わがまま。唯我独尊。そんな感じ。さらに気になるのは、椅子の高さを始終気にして微調整しまくりのご様子。もぞもぞもぞもぞネジをまわしてばっか。このひと痔が悪いんじゃないの? とまた邪推。相当神経質のようだ。
 というわけで、どうも統一された音楽として聞こえてこない。眠くもなる。ふむ、と思いながら第二部に臨むや、第一部はなんだったのと怪しむぐらい今度は俄然音が生き生きしてくる。室内アンサンブルのカメラータ・ジオンとエリック・ハイドシェックの演奏で、奥さんのターニャさんは登場せず。エリック君、なんだかノリノリ。カメラータ・ジオンの面々も煽られたのか気合が入った(みたい)。客席の集中度が一気に上昇。横を見れば、第一部で眠っていた武家屋敷はカッと目を見開き、若頭なんか身を乗り出して聴いている。
 終ってみれば、拍手の嵐。アンコールが1曲で終らず2曲も。エリック君満足げ。ふむ〜。久々のクラシック音楽を堪能した夜だった。