撮り方ビデオ

 捨てることが趣味になり、さてこれは、あれは、こっちは、そっちは、これからの人生で本当に必要だろうかと考えたら、どうもそうでもなさそうだと思えてきて、捨てる。捨てる。あれも、これも。やり始めたら切りがなくなってきた。
 たとえばだ。いまどき携帯電話で動画も撮れるのに、8ミリビデオ(若い人はもう、こう言ったってわからないのじゃなかろうか)を持っていること自体が骨董趣味かもしれないのに、そのバッグともなると意味不明、今後の人生で役立つとも思えない。さらに、バッグの中をあらためてみると、「撮り方ビデオ いつかきっと見たくなる思い出ビデオ撮影のコツ」なるテープが入っていた。意味ない!
 あれを捨て、これを捨てているうちに、鏡を見ながら自分の髪をハサミで切るサラ金のコマーシャルを思い出した。事前に計画を立てましょうというアレだ。本当にこのまま捨てつづけたら、この部屋に移ってきたときの状態にまで戻ったりして…。(んなこたねえか)
 捨てる直前、文字が書かれていればそれを読んだり、手に持って重さを計ったりしているが、今となってはそれぐらいの価値しかなくなっているものがほとんどだ。へー、こんなものまで、と思うようなものも。