いい歳

 NHKでおもしろい番組をやっていた。変わった趣味(本人はそんなふうには思っていないはず)の人を集め紹介する番組で、ある女性は、バスが好きで好きでたまらなく(それも特定の線型のが好きとのことだったが、忘れた)とうとう中古の○○線型のバスを買って自家用車として使っているとか。消防自動車やはしご車が好きで本物を購入した中年男性もいた。輪ゴム鉄砲づくりの趣味が嵩じて、日本輪ゴム鉄砲学会みたいなのをつくり、今では会員が千人を超しているとか。男の人でシャワーキャップ収集が趣味(?!)の人も。紙相撲は横浜が重要拠点らしい。横浜国技館というのがあって、国技館のミニチュア版が六畳の部屋の中にある。呼び出しや行司までちゃんといて、それなりに厳格なルールがあるらしかった。
 最初は「世の中には変わった人がいるなぁ〜」と岡目八目で観ていたのだが、なんだか、だんだん羨ましくなってきた。
 出演者の皆さんは、三十代から五十代が多そうで、おそらく周りから「いい歳をして何をやってるの」と言われているのではないだろうか。いや、きっと言われている。でも、たとえば番組中、奥さんにナイショで三十万円ではしご車を買い、消防士の格好をしてレバーを引き、はしごがスルスルと空に向かって伸びていく姿を見て「いいもんですねぇ〜。いいもんですねぇ〜」と繰り返す晴れやかなおじさんを見てなかなか笑えないと思った。奥さんは困ったものだと嘆くかもしれないが、他人に迷惑を掛けているわけではない。
 「いい歳をして」はふつう揶揄していう言葉だが、「いい」のアクセントを変えるとニュアンスも変わる。