要注意!

 早朝、テレビを付けたら杏林大学の金田一秀穂(きんだいち・ひでほ)教授が出ていた。京助を祖父に、春彦を父にもつ国語学者一家の三代目。
 なんとなく見ていたのだが、「今の若者は日本語も知らぬ」と言って嘆く大人が日本語を間違って使っているのに出くわすことがよくあるというから、これは聞き捨てならぬと目をひらく。
 教授いわく、「さわりを聞いただけで判断することは…」みたいな言い方をする人がいて、その人は「話の最初だけを聞いて」の意味で使っているようなのだが、それは大きな間違いである。「触り」とは、もともと浄瑠璃用語で、話の中心となる部分、聞かせどころの意味であり、演劇・映画などの名場面、見どころを指すという。へ〜、知らなかったぁ〜! 危ねぇ危ねぇ。
 教授またいわく、何かの席の挨拶で「くじけぬこころをもち流れに棹さして生きていってほしい」みたいなことをおっしゃる方がいるが、言わんとする気持ちは分かるけれど、間違っている。「棹さす」というのは「抵抗する」の意ではなく「時勢・流行にうまく乗る」の意。真逆ではないか! 念のため『大辞林』で調べてみたら確かにそう書いてある。危ねぇ危ねぇ。
 ふむ。ほかにもけっこうありそうだ。謙虚に辞書を引くしかないな。