研究テーマ

 谷川健一さんから電話が入る。日本経済新聞の夕刊に金曜日までコラムが連載されるらしい。
 さっそく広告代理店に電話し、FAXしてもらう。「<小さき民>こそ わが師」というタイトルで市町村合併についての安易な方策について警鐘を鳴らしている。谷川さんは現在八十三歳。柳田国男と折口信夫を継承する民俗学の泰斗だ。
 記事を読んで驚いたのだが、谷川さんが研究を始められたのは四十九歳とのこと。五十を前にして一念発起したのだろうか。これまで何度かお目にかかりお話をうかがう機会があったが、現状のさまざまな問題が徐々に時間性、歴史性を帯びてきて、まるでタイムマシンに乗っているような気になってくる。『宗像教授伝奇考』を読むよりも面白い。膨大な時間によって培われた庶民の知恵を伝承することは、今のわれわれの生のゆたかさにつながっていると気づかされる。晶文社から『独学のすすめ―時代を超えた巨人たち』がでているが、遅読のわたしが一気に読んだ。谷川さんの先人に対する敬愛の情と学問への決意がみなぎっているからだろう。