預かり主

 

・春風をまとい少年登校す

 

D・M・ロイドジョンズ著『山上の説教』(上・下)
井戸垣彰訳。
古書でもとめていたものですが、
いま上巻を読み始めたところ。
読むのに支障のない程度に、
赤鉛筆と青鉛筆で多く線が引かれており、
前の読者がこの本に熱心だったことを彷彿とさせます。
上巻奥付の裏には、
H6.3.5(金)再読開始
H6.4.8(金)読了
と記されています。
持ち主の名前までは記されていませんが、
本がこうして読み継がれていくとすれば、
本を持っているということは、
持つというよりも、
預かっているのに近い
という気がします。

 

・アナウンス時間調整春うらら  野衾

 

哲ちゃん

 

・音立てていま盛り上がるふきのとう

 

いまいちばん楽しみにしているテレビ番組が
『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』
充電式電動バイクで旅をする番組で、
ゲスト、ディレクターといっしょに
50ccのバイクで日本各地を旅します。
いっぱいに充電しても
20キロほどしか走れませんから、
充電が切れたところで
お店や民家に飛び込み、
充電させてもらうことになります。
「人情すがり旅」のキャッチフレーズどおり、
老若男女、
その場その場の
ちょっとした人情に触れられ、
見ていてなんともほっこりします。
それを出川さんがうまく演出しているとも言えます。
三日の土曜日は、
唐沢寿明さんと
アンガールズの田中さんがゲストでした。
次回は二十四日。

 

・ぶらぶらと下校も楽し春の道  野衾

 

コーヒーの味

 

・とろとろとまぶた重たき春となる

 

近所のりなちゃんは、
彼女が四歳のときから知っていますが、
今年の四月から
高校二年生になります。
小さいころから家族ぐるみで海に行ったり、
秋田に行ったり、
家族みたいにしてきました。
先日遊びに来たとき、
「わたしもコーヒー飲んでみようかな」
と言いますから、
「どうぞどうぞ」
と、
とびっきりのコーヒーを淹れてあげたところ、
「おいしい!」
よかった。
いままで何度か
コーヒーを飲んだことがあったけれど、
おいしいと思ったことが
なかったそうで。
わたしはもちろん
うれしかったけれど、
りなちゃんも終始にこにこ、
音楽に合わせ、
からだでリズムをとっているのでした。

 

・磨りガラスオルガンの音や春淡し  野衾

 

きょうより三月

 

・春なればまぶた重たき会議かな

 

今週は、
きょうあたりからぐっと気温が上昇するらしく、
きょうの最高気温は21度。
四月下旬の暖かさだと気象予報士の
関口奈美さんが言っていました。
一日の寒暖差が激しく、
エアコンの設定温度をこまめに変え、
仕事に支障をきたさぬようにしています。
さて三月に入りました。
イベントが二つ。
ひとつは11日(日)15:00~16:00、
銀座教文館でのギャラリートーク。
大地の声を聴く 本づくりの現場から」と題し
わたしが話すことになっています。
定員30名で、
参加ご希望の方は事前に教文館にお申し込みください。
(電話:03-3561-8448)
もうひとつは31日(土)
映画『鎌倉アカデミア 青の時代
本編上映は13:00~15:00(開場 12:30)
その後対談15:10~16:10 大嶋 拓(監督)×三浦 衛
会場は横浜市教育会館 4Fホール(春風社の上階)
料金:全席自由 500円
いずれも、
ご興味のある方はどうぞお運びくださいませ。

 

・坂道を転がれ春のあられたち  野衾

 

花粉の季節

 

・立ち去りし白き女人や風光る

 

二月は今日で終わり。
天気予報を見ると、
きょうあたりからぐんぐん気温が上昇しそうです。
そろそろ寒さに飽きてきましたから、
願ったりですが、
同時に、
花粉の量も一気に上昇すると、
予報士が警告を発しています。
わたしはまだ発症していませんが、
鼻ぐずぐず目は痒そうでなんともつらそう。
風邪対策から花粉対策へ。
マスクを手放せません。

 

・やわらかく水面光るや春の里  野衾

 

夢の話――増殖する部屋

 

・コーヒーをふたつ並べる春の宵

 

わたしが住んでいるボロアパートに畏友の上田さんが遊びに来ました。
ボロアポートながら、
部屋は三つありますから、
上田さんにゆっくり泊まってもらうことができます。
少し近況を聞き、
上田さんにと思った部屋を確認しに行くと、
その奥にもう一つ部屋があることに気が付きました。
どうして今まで気が付かなかったろう。
薄暗い座敷牢のような部屋。
こわごわ入ってみると、
さらにその奥に板張りの部屋があって、
黒光りする大小の仏像が所狭しと置かれています。
後ろからついてきた上田さんが、
へ~、
と驚いています。
仏像のある部屋の隣は、
カントリー&ウェスタンのバーになっていて、
そのレコードの多さには舌を巻きます。
カントリー&ウェスタンといえば、
上田さんの得意とするところ、
彼に即興で演奏するよう促すと、
まんざらでもなくすぐにギターを取り上げ演奏が始まりました。
やんややんやの大喝采。
演奏が終わってバーを抜けると、
そこは広々とした遊園地。
ジェットコースターもあればモンスターもいて。
部屋がつぎつぎ生まれ、
現れ、
性質を変え、
増殖はまだ止まぬようです。

 

・恥ずかしきこころに似たり光る風  野衾

 

文学は

 

・水温む忙(せわ)しなき銀行員の手

 

このごろ人文系の学部への風あたりがつよく、
とくに文学部に所属する先生方は、
さぞ肩身の狭い思いをしているのではと
想像されますが、
日本のカリスマ的な精神科医である
中井久夫さんの本を読むと、
彼の人間を見るまなざしに、
文学作品がいかにかかわっているかを知り、
医療現場においても、
トータルな深い人間理解が欠かせない
ことに改めて気づかされます。
それぞれの現場で
実体験からの人間理解は
基本かもしれませんが、
古今東西の文学作品に触れていることは、
いつか補助線となって、
思わぬところで
役に立つかもしれません。
また、
役に立たなくたっていいとも思います。

 

・春泥に歩(ほ)を踏み入るる農夫かな  野衾