狐

 

 ダマッコの白玉無敗のオセロかな

子どもの頃、秋になると、
果樹園をやっている母方の親戚に梨を買いに行きました。
まだ自家用車がなく、
耕耘機にトレーラーを付けたものを父が運転し、
母が助手席、わたしと弟は荷台に乗って
風を浴びながらはしゃいで行ったのを覚えています。
親戚の家を訪ね従兄弟たちとひとしきり遊んだ後、
果樹園に行って梨を箱ごと買って帰るのです。
夕方になると、昼と違い果樹園は鬱蒼とした森に変貌します。
少し肌寒くなってきます。
森のあちこちで、烏がガーガー鳴いています。
八郎潟を右に左に見ながら父は運転するのですが、
あるところに来て、ブレーキを踏みました。
どうしたのかと思って荷台の縁に顔を出すと、
父が「まぢがえだみだいだ」と言いました。
それからハンドルを切って、エンジン音を威勢良く鳴らし、
また走り出します。
どれぐらい走ったでしょうか、
父は、また、ブレーキを踏みました。
「…おがしな…。まだこごさ出でしまったな…」
さすがに父も焦っているようでした。
「きづねに騙されだべが?」
わたしと弟は顔を見合わせました。
背中に冷たいものが走りました。
小さい頃のことで、よく憶えていませんが、
あとは無我夢中で家に辿り着いたような気がします。
このことを思い出したのは、
先日、宮沢賢治記念館へ向かう上り坂の辺りの様子と
空で鳴いていた烏が少なからず影響しているようです。

 友来り風にふるえるとろろ汁

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新米ダマッコ

 

 仲秋のダマッコ頬張る御殿山

収穫なった秋田こまちの新米を父に頼んで送ってもらい、
さっそく秋田の郷土料理・ダマッコ餅を作り、
気の置けない仲間といっしょに食しました。
うめがったー!!
奇しくも空には仲秋の名月、雲がたなびき、
秋の風情を愉しませてくれます。
同じ町出身の後輩の発言に、そうだ、我が家でも、
この時期、芒の花を生け、
収穫なった米で搗いた丸餅、梨、栗、りんご、山のあけびなどを器に入れ、
月に手を合わせていたことを思い出しました。
父の手の厚さ大きさをチラと横目で見遣り、
真似してパチパチと拍手を打ったものでした。

 ダマッコ二つトランペットのガレスピー

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勘ばたらき

 

 メアリーと各自風船持てよ秋

勘ばたらきといえば鬼の長谷川平蔵ですが、
鬼平にかぎらず、勘をはたらかせることは大切です。
今編集している本を印刷所に渡すとき、
このグラフ、なんか間違いが起きそうだなと直感しました。
これもひとつの勘ばたらきかもしれません。
そうしたら、案の定、二色で刷られた折れ線の色が
上下逆さまになっていました。
本になるまでに、校正紙、刷り出し見本と、
二度チェックするのですが、
校正紙の段階でミスを正し、
正しいもののサンプルをパソコンで出力し、
見本として添付して送ったにもかかわらず、
刷り出し見本において、また間違えていました。
印刷所の担当に連絡し、直してもらったので、
事なきを得ましたが、
間違えそうなところでやっぱり間違えが起き、
こういうことの気付きは、
経験による以外にないような気がしました。

 秋寒や銀河の底の鹿踊り

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usbメモリ

 

鳶高みイーハトーブ秋光る

Universal Serial Busの頭文字を取って、うsb、
間違えました。
usb。
会社にお客さんがいらして、その小さなモノを取り出し
ノートパソコンにぽちっと差し込んでいる姿を見るにつけ、
なんかよく分からないけれど、
時代の先端を行っているなあと感心していましたが、
編集長ナイ2(ナイツーと読んでください。
ほんとは内藤くんです)から、
会社の大事なデータはusbメモリにバックアップを
取ったほうがいいですよと教えられ、
そのモノを買ってきてくれたので、
さっそく保存をかけてみました。
そうしたら、入ること入ること、
なんぼでも入ってしまう感じです。
ちなみにこの「よもやま日記」ですが、
HDのフロッピーディスクなら半年で一枚使います。
十年間分だと20枚。
それがusbメモリだと、あんな小っちゃなモノに、
すこんとぜーんぶ入ってしまいます。
なんだか夢のようです。
パソコンに詳しい方や若い人にとっては
当たり前のことでしょうが、
わたしにとりましては実に画期的!
急に21世紀に参入した気になってもいます。
機械音痴なだけに、一つ新しいことを知ると、
その分喜びもデカいです。
さて、今日は何をバックアップとるかな。

 九年ぶり秋風宿すキンキ焼き

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風まかせ

 

 赤松や水に映りし秋の風

今日で九月が終りですが、
弊社にとっては十周年の日でもあります。
明日から十一年目に入ります。
十年間の略史みたいな本をと考え、原稿を用意しましたが、
ぎりぎり間に合いました。
編集はナイ2くん、装丁は多聞くん、装画はしりあがり寿さんです。
お世話いただいた皆様、これからご縁をいただく皆様、
これからも春風社をよろしくお願いします。

 秋風に身を焦がしつつ稲穂かな

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九年ぶりのキンキ焼き

 

 秋風や浄土を醸す金色堂

この二十七日、二十八日と社員旅行で、
東北を旅してきました。
今回は、毛越寺(もうつうじ)、中尊寺、
宮沢賢治記念館、花巻温泉をメインに、
一泊二日と短い時間でしたが、
幹事のテラチーオカチーが絶妙のスケジュールを立ててくれ、
おかげで、ゆっくりしながらも充実した旅になりました。
ところで、一ノ関の富澤さんは、
社を起こして最初の社員旅行のときに行ったお店で、
そこのキンキの塩焼きの味が忘れられず、
九年ぶりに訪れたのですが、
全員、思わず唸ったり、はしゃいだりしながら、
キンキ丸ごと一匹ずつ塩焼きを堪能しました。
編集長のナイ2いわく、
こ、こ、これは料理ではないですよ!
洋食屋をやっていた父がよく言っていたのですが、
料理というのは、それなりの素材をソースとか油とか、
もろもろを使って美味しくするもので、
最初からこんな美味しいものは、料理とは呼べないでしょう…。
なるほど。
わたしも、前に勤めていた会社の社長に同行し、
高級料亭といわれるお店で
いろいろ日本料理を食する機会がありましたが、
全国広しといえども、これほどの味はちょっとありません。
キンキだけでなく、酢の物も刺身もホタテのお吸い物もまさに絶品!
というわけで、
来年の社員旅行も東北にします。
もちろん富澤さんは外せません。外しません。
というか、一年に一度、富澤さんの料理を食するために、
東北へ足を伸ばすことにします。

 芒原時へ誘ふ阿弥陀仏

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防鴉

 

 洟啜る傍若無人の虎一匹

週に三度、管理会社から委託された女の人が
マンションを掃除しに来てくれます。
そんなに高い給料ではないはずですが、
隅から隅までよーく清めてくれます。
今度の人は良くやってくれるねーと
賞賛の声が上がっています。
玄関を出たところにゴミの集積所があり、
網が設置されていますが、
ゴミが少しでも網から外れていると、
カラスの絶好の餌食になります。
掃除のおねえさんは、
その始末もきれいにしてくれます。
これは何とかしなければと思い、
まずは、ゴミをきちんと網の中に入れることだと考え、
管理会社に頼んで、雨に濡れても大丈夫なように
貼り紙をすることにしました。

おはようございます。
網の中にきちんと入れましょう。
鴉が狙っています。

カラスを「烏」にしようか「鴉」にしようか
ちょっと迷いましたが、
あのデカい牙を連想してもらえるように、
「鴉」にしました。
なんたって、牙の鳥で「鴉」=カラスですから。

 白よりも青が身に沁むこころなり

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