傑作パンフ!

 

 秋集ふ朱き唇ナポリタン

秋田県農林水産部水産漁港課の鰰(ハタハタ)のパンフが凄い!
県庁から毎月送られてくる資料のなかに入っていたものですが、
こんなに元気のでるパンフレットは久しぶりです。
煮て良し焼いて良し鍋で良しのハタハタをぜひ知ってもらいたいというこころが、
パンフレットのどこを見ても溢れています。
このパンフの制作にかかわった方たちが人後に落ちぬハタハタ好きなのでしょう。
ドッカ~ン!! と表に鰰をもってくるあたり、
ちょっとほかでは思いつかないのではないでしょうか。
神の魚鰰[秋田ハタハタ]
どうだ! 知っとるか! これが秋田名物ハタハタだぞ!
口角泡が飛んできそうではありませんか。
鰰の文字の由来、秋田人の鰰に寄せる思いが静かに細やかに記されています。
裏を見ると、
「これぞ神の魚「秋田ハタハタ」実寸大」
あはははは…このノリ、好きだなあ。
愛が溢れているじゃありませんか。
感謝のこころが滲みでているではありませんか。
そうだそうだ、秋田人は鰰をいただいて育ったのだということを
思い出させてくれる 傑作パンフレットです。

 御殿山手に一冊の秋を知る

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たからもの

 

 うれしきはりなぴの刺繍高き空

近所のりなちゃんが、土曜日、
お母さんとおねえちゃんと訪ねてきてくれました。
『出版は風まかせ』が出来たことのお祝いに、
ひと月ほどかけて刺繍をつくり、それを持ってきてくれたのです。
なんとすてきでしょう!
わたしは、それを見て泣きそうになりました。
刺繍のなかのわたしは、この夏気に入って着ていた
ピンクのTシャツを身に着けています。
左手には、このごろいつも持っているgentenのバッグ。
右手には一冊の本。
背景の木には緑や黄緑の葉が茂り、赤い風船が空高く飛んでいきそうです。
りなちゃんもわたしも、うさぎも猫も、小さな花たちも笑っています。
りなちゃんは、わたしのお気に入りの紺のシャツ。
土曜日もそのシャツを着て刺繍を届けてくれました。
一生のたからものです。

 りな刺繍赤き風船秋の夢

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パフパフ

 

 銀杏散るなか真っ直ぐにビーフカレー

さて今日はなにを書くかなとパソコンに向かって、
すっと書けることもあれば、そうでないときもあります。
うんうん唸っているうちに、
子供の頃のことがふっと思い浮かんだり…。
思い浮かんだり鼻かんだりラジバンダリ、っていうお笑いの人たち、
いつの間にか見なくなっちゃいましたね。
それはともかく。
同級生の親父さんで、パフパフと呼ばれている人がいました。
あれは、どれぐらいの範囲で言われていたのか分かりませんが、
少なくとも我が家では、それで通用していました。
「パフパフが今日来て、茶を飲んでしばらく話して行ったよ」とか、
「パフパフは字が上手くてな。○○なんか揮毫してもらったはずだ」
「さっきパフパフが通ったぞ。パフパフいわせて…」
三番目の例でなんとなく想像できたかもしれませんが、
パフパフは50ccのバイクに付いている
クラクション代わりのゴムのラッパのことであり、
その音がパフパフパフパフとユニークな音なので、
いつの間にか、それを鳴らす人のことをも
パフパフと呼ぶようになったのでした。
パフパフパフパフパフパフパフパフパフパフパフパフパフパフパフパフパフパフ
(あれは、おとぼけの我が父が命名したものではないかと
密かに疑っています)
パフパフは背骨が釘のように曲がっていました。
わたしは、50ccのバイクで走るパフパフを
いろんなところで目にしました。
大きくなって本を読むようになり、
パトリック・ジュースキントの『ゾマーさんのこと』を読んだとき、
なんでだか分かりませんが、
わたしはすぐにパフパフを思い出しました。
主人公の少年がゾマーさんが気になり見ている眼差しに、
パフパフを見ていたわたしの少年時代が重なったのかもしれません。
パフパフの娘とわたしは同級生で、
わたしはそれと知らずに水疱瘡を彼女にうつしたことがありました。

 銀杏敷き浮かれ跳び出づピエロかな

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ゴルゴサーテーン

 

 ぎがぎがと沈み行く陽の銀杏散る

昼、近くの定食屋に入りました。
わが社が入っているビルは丘の上にあるため、
近くにあまり食べ物屋がありません。
なので、交差点角にある定食屋はいつも満席になります。
十一時四十五分に行きました。
一番だろうと思ったのに、豈図らんや、すでに五人いました。
カウンターは予約のしるしの箸が置かれています。
仕方なく四人がけのテーブルの席に着きました。
ランチを頼み、
暇つぶしにケータイの写真を見たりしているうちに、
「お待ちどおさま」
串揚げ、鯖の味噌煮、タラちり、おしんこ、蜜柑も付いて800円。
と、程なく中年男性が二人入ってきました。
一人はオレンジ色の作業着にバーコード頭、一人はスーツ姿。
厨房からマスターが「ご相席でお願いしまーす」
「すみません。ここ、いいですか?」
「はい、どうぞどうぞ」
というわけで、わたしの向かいに座りました。
スーツ姿の男性が立ってカウンター横のラックから雑誌をとってきて、
一冊を連れに渡し、席に着き、自分のをめくり始めました。
すると、雑誌を渡されたほうのオレンジが、
「お、新しいゴルゴサーティーンか!」
それを横目でちらと見たスーツ姿が、
「あ、ゴルゴサーテーンなら、そっちを先に見るんだった」と悔しそう。
オレンジがゴルゴサーティーンと言ったのに対し、
スーツ姿は、ゴルゴサーテーン。
スーツ姿のほうが年上の上司なのかなと思いました。

 鰯雲師の影仰ぐ声届け

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ミニうに丼

 

 さて一献こみらと旨し子持ち鮎

今年の社員旅行の際、一関の富澤さんに寄ったことは
以前ここに書きましたが、あのキンキ焼きともうひとつ
忘れてならないものがありました。
ミニうに丼です。
下の写真をご覧ください。
ミニうに丼といいながら、うにの量が半端ではありません。
わたしはつい、丼の端に箸を入れ、端に箸を入れ、
(はい、ダジャレです)厚さを測りました。
値段も2900円とミニとは言えません。
驚いたのは味です。
量で驚かせる店は他にも知っていますが、
富澤さんのは味が違います。
厨房を見たわけではないので、正確なことはわかりませんが、
生のうにをその場でさばいて
丼に持っているのではないかと思われます。
なぜそう思ったかといえば、
出てくるまでに結構時間があったからです。
キンキ焼きよりも後に出てきました。
あれだけ大きいキンキ焼きですから、
焼くのにも相当時間がかかるはずです。
なのに、うに丼のほうがキンキ焼きよりも後に出てきた。
それはやはり、
さばくのに時間がかかるからではないでしょうか。
そもそもこの富澤さん、
九年前の社員旅行で一関の駅に降りたとき、
駅員に尋ね教わったお店でした。
駅員は言下に「それなら富澤さんでしょう」と
教えてくれました。
豪勢なキンキ焼きとミニうに丼を食するのは、
(さらにホタテ汁、これまた絶品!)
なんとも贅沢な話ですが、
一年に一度、富澤さんのキンキ焼きとミニうに丼を
味わうことを目標に、仕事をがんばろうと思います。
一関に行かれる際には、
菅原昭二さんがやっているジャズ喫茶ベイシーと
富澤さんを訪ねてみてはいかがでしょう。
ベイシーと富澤さんは、歩いて六、七分の距離です。

 ゴミの日の裏冷ややかに驚きぬ

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正紀叔父の笑い

 

 生き仏ら騒ぎ師の声天高し

いきなりですが、わたしの父の名は進。一字です。
すぐ下の弟、わたしにとっては叔父、の名は勤。
これも一字。
わたしが衛で、弟は覚。従兄弟たちも、
隆、力、誠、治、透、正、健、亙、などなど、
一字の名前が多い。
そのように、一字の名前が多い一族なのですが、
まれに二文字の名前の人がいまして、
正紀叔父はそのうちの貴重な一人。
その正紀叔父、先日、朝三時ごろ、
布団の中で突如大声で笑い出した。
驚いたのは、隣で寝ていたおばさん。
「なした? なした?」
「なした」は秋田方言で、「どうした」の意味。
訊けば、正紀叔父、拙著『出版は風まかせ』の
「著作権」の章を読んでいて吹き出したのだとか。
「ああ、衛も都会に出て、いろんな人に揉まれ、
ずいぶん苦労したのだなぁ、あははははは…」
という訳なのでした。
その話を、わたしは母から電話で聞きました。
おばさんがわたしの母に会ったときに、
そのことを告げたのだそうです。
それにしても、と思いました。
正紀叔父の笑いの質は、
たしかに我が一族に共通するものである、
と妙に腑に落ちた次第。
ちなみに、正紀叔父は夜通し読んでいたわけではなく、
朝目が覚め、眠れなくなり、
そうだ、衛の本でも読むか、となったようです。

 秋うらら美智也の声の夢千里

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えらそうな人

 

 鰰の眼のうるうると出張りけり

久しぶりのえらそうな人でした。
このごろ風が気持ちいいので、
会社入口のドアは開け放していることが多いのですが、
ゆっくり、のっそり、えらそうな人は入ってきました。
いきなり、「○○君はいるかね?」
挨拶もなにもなしに、「○○君はいるかね?」
いますか? でなく、いるかね?
しかも両手を後ろに組んだりしています。
ははぁ、どこかと間違えているなと思いましたから、
わたしは自分の席から、
「ここは春風社という出版社です」と叫びました。
えらそうな人は、しばしきょとんとしています。
ウチのテラチーオカチーが、気を利かして
えらそうな人に近寄り、どちらへおいでですか、
とかなんとか尋ねています。
えらそうな人は、「それなら、△△君はいるかね?」と、
あくまでもえらそうに部屋を出て行きました。
わたしは、えらそうな人が嫌いです。

 鰰の潔き身をほぐしをり

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