イシバシ語録

 

弊社創業メンバーのひとりイシバシは、
なかなかの笑いの才の持ち主で、
これまで幾度となく腹をかかえて笑わせてもらった。
たとえば、
『原子と原子が出会うとき』(他社の本で、いまも販売されています)
の書名を
「はらことはらこがであうとき」
と読んだり、
エスノメソ、エスノメソというから、
なんのことかと思ったら、
弊社から出ている『エスノメソドロジーの可能性』
の彼女なりの略称だったり、
「こんどの『春風倶楽部』のテーマは「ぜんしゅう」にする」
とわたしが言えば、
ちがう宗派からクレームが来ないかとこたえたり、
宗教学の先生に会って、
明恵の研究をしていると言われ、
「先生は明恵にお会いになったことがあるのですか」と質問し、
先生に
「明恵は鎌倉時代のひとですから会ったことはありません」
と答えられたり、
わたしとふたりで出かけた際に、
パスタ屋で食事をして店を出てから、
わたしが
「となりのひと、かれいしゅうがしていたね」と言えば、
「え!? あの店にカレーはなかったでしょ」
と真顔でこたえたり、
事程左様にこの種のエピソードに事欠かないで来ていたのに、
ここのところ、
知恵がついてきたのか、
アッと思うようなことを言わなくなった。
と思いきや、
先日、
久しぶりに腹をかかえて大笑いし、
イシバシの才能が失われていなかったことを一人慶賀した次第です。
前置きがながくなりました。
本題に移ります。
夕方五時くらいでしょうか、
書類を書いていたイシバシが不意に顔を上げ、
ウズ、ウズ、ウズとなにやら言いよどんでいます。
なんだよ、
と思って顔を上げると、
「ウズパキスタンて、どの辺だったかしら?」
「ウズパキスタン?」
わたしが訊き返すと、イシバシ、ハッとしたらしく押し黙っています。
「いまなんて言ったの?」
「ウズパキスタン…」
「ごっちゃになってるじゃないの」
「え!?」
「ウ・ズ・ベ・キ・ス・タ・ンだよ」
「ああ、ウズベキスタンね」
「そうだよ。ウズベキスタンだよ。しっかりしてくれよ」
「はい」
「まあ、久しぶりに笑わしてもらったから、いいけど」

 

・おとなしや秋もなぎさも伊良湖崎  野衾