逆臣は歴史によみがえる

 

私はおそれる――近き将来、この憲法が書き換えられ、わが国に軍備が再編成され、
それに適応する体制がとられることがあっても、
人々は怪しまないのではないか、と。
さらにおそれる
――国民の一部の間には、好機到来せりとなし、
再び戦争に参加し、わが国失地の回復を考えるものはないか、と。

 

うえのことばは、
第二次世界大戦での敗戦後、
東京大学の初代総長をつとめた南原繁が、
1950年11月5日に高松で講演した話のなかに出てきます。
岩波書店発行「南原繁著作集」第七巻『文化と国家』に収録されているそうですが、
わたしが読んだのは、
著作集ではなく、
1996年に東京大学出版会から発行された
『わが歩みし道 南原 繁――ふるさとに語る――』
著作集から転載した
と但し書きが添えられています。
この文章を読み、
いまの日本のありさまを思わずにはいられません。
それと、
学生の頃からずっと愛読してきた中野好夫の
「逆臣は歴史によみがえる」
の文章を思い出しました。
「逆臣は~」は、
筑摩書房刊『中野好夫集Ⅳ』に収録されています。
こちらは、
1969年12月に発表されたもの。
ちょうど半世紀前にあたりますが、
これも時代を洞察することばであると思います。

 

・秋あかね空いつぱいの友のかほ  野衾