季節の記憶

 

きのう叔母と電話で話していたら、
おととい十五日に金婚式をむかえたとのこと。
結婚五十年を祝ってパチンコに行ったらめでたく勝ったのだそう。
それはめでたい
ということで笑い合ったが、
それよりも、
五十年前の叔母の結婚式が十月十五日だったことに
ちょっと驚いた。
わたしは小学六年生。
担任の先生にわけを話し、
早引けして家に向かったことを覚えている。
そのころは家で結婚式を挙げていた。
寺沢にある営林署の官舎のあたりで坂を下りてくる自動車が見えた。
先頭の自動車が停まった。
見ると、
後部座席に真っ白い顔の叔母が乗っていた。
目のところが少し赤くなっていた。
この場面の記憶はハッキリしている。
が、
わたしはこのときひとりと思っていたのに、
じっさいは、
三つ下の弟も学校を早退しいっしょに歩いていたらしい。
弟はそのことをハッキリ記憶していた。
それともう一つ。
わたしはそれがなんとなく、
春の出来事だとばかり思っていた。
五月、
あるいは梅雨入り前の六月、
ところが事実は十月十五日であったということになる。
水の中に斜めに棒を入れると曲がって見える。
かならずそう見える。
曲がっているとしか思えない。
ところが水から出すとまっすぐだ。
たとえばそんな感じ。
あれが十月の出来事だったとは。

 

・秋の日の潮騒の音の旅寝かな  野衾