宗教について

 

世界を観察する際に、固有の奇跡を見ない者、
またその魂が世界の美しいものを吸収し、
また世界の精神によって貫徹されたいと願っているのに、
その人の内部に固有の啓示が表れ出ない者、
また神的精神に駆り立てられ、聖なる霊感によって語り、
また行動していると確信をもって感じることができない者、
少なくとも
(それはこれが最低限度だからそういうのですが)
自らの感情を、
宇宙の直接的な影響として意識せず、
また自らの感情の中には
自分自身のものだと認識できない何か別なものがあるばかりではなく、
その純粋な起源は自らのもっとも深い内面にあることを保証しているものがある
ことを認識しない者は、
宗教を持つことができない人です。
(フリードリヒ・シュライアマハー/深井智朗[訳]
『宗教について 宗教を侮蔑する教養人のための講話』春秋社、2013年、pp.119-120)

 

宗教の根本は直感と感情にあると喝破するシュライアマハーの考えが
ここにはっきりと現れています。
この本全体を通して、
新井奥邃と共通した感触がありました。
とくに本のサブタイトルにそのことがでている気がします。
訳者は、
ことし研究上の不正行為が発覚したひとですが、
この本にかぎって言えば、
ドイツ語でなく翻訳書とはいえ、
一冊の日本語の本として
宗教に関するすぐれたものであると思います。

 

・こちらよと道を示してすすきかな  野衾