思いちがい

 

三か月、いや
四か月ぐらいになりますかね、
上の階からキーコキーコという音が聞こえてきます。
バイオリンを習いたてなのでしょう。
義理の姪っ子がバイオリンをやっており、
横浜に遊びに来たとき弾いてくれたことがありますが、
すでに立派に弾くことができていた
ことを懐かしく思い出したりしました。
上の階の子もキーコキーコの過程を経てだんだん上手くなるのでしょう。
さて、
おとといの土曜日は鎌倉での句会の日で、
家を出たのが12時50分。
ドアを閉めカギをかけて外へ出ようとしたとき、
よく見知った上の階の男性がちょうど外から帰ってきたところでした。
「こんにちは」
「あ、どうも、こんにちは」
見れば、
肩に明らかにバイオリンのケース。
あ!
声が漏れそうなところをグッと我慢。
そうか。
そうだったのか。
てっきり子どもとばかり思っていたけれど…。
そういえば、
朝起きてツボ踏みの運動をしているとき、
数か月前から、
土曜日であるにもかかわらず、
バイオリンのケースを肩にかけ
坂道を下りていくあの男性の後ろ姿が窓から見えていました。
バイオリンのキーコキーコ=習い始め=子ども
という固定観念に縛られていましたが、
習い始めのキーコキーコに、
子どももおとなもありません。
大きな思いちがいでありました。

 

・稲妻や閨も恋路も隠れなし  野衾