吉とでるか凶とでるか

 今年は例年になく稲が豊作のようで、いまのところ農家は大喜び。昨日は北秋田地区で大雨洪水警報がだされたぐらい大量の雨が降り、それから降る地域が広がったのか、ここ南秋田郡でも昨夜から途切れることなく慈雨が降っている。これで台風が来なければ、と父は言う。
 一年手塩に掛けてきた稲も、台風に直撃されればぺちゃんこになぎ倒され、一巻の終わり。農業が天候によって大きく左右されることは「ダッシュ村」の例を見てもわかる。これから二ヶ月、農家の人はだれでも、台風の発生と進路に戦々恐々となる。
 収穫を当て込み農協から借金してきた農家は、台風一過で元も子もなくしてしまう。娘を売りに出すことは今はさすがになかろうが、出稼ぎを余儀なくされ、遠くで働いているうちにさびしい思いに駆られて、なんのために出稼ぎに来たのかわからなくなってしまうことだって起こりうる。一家離散への不幸の連鎖の始まりが台風であったという、笑うに笑えぬ話もある。
 実るほどこうべを垂れる稲穂は、垂れれば垂れるほど台風に弱い。十分な実入りを望み、あと一日刈り入れを待ってみようと欲をかいたことが凶とでて、台風にやられることも間々ある。その見極めが難しい。経験上そのことが分かるわけではない、父や周りの農家を見ていてそう思う。