グラウンドワーク三島

 「富士山」本企画の打ち合わせで三島へ。NPO法人富士山クラブ事務局長の渡辺豊博さんに会ってきた。
 渡辺さんは富士の裾野・静岡県三島市で育った。(生まれはわたしと同じ秋田だとか)三島は古くから「水の都」として有名であり、素晴らしい環境を誇ってきたが、昭和三十六年以降、上流地域で産業活動が活発化したことにより、地下水が汲み上げられ、川や湿地から湧水が消失、ゴミが捨てられるようになった。
 憂慮すべき状況の中、平成三年、渡辺さんは仲間を集め「三島ゆうすい会」を設立、水を守り、育てるための市民活動を開始。当時から、水を供給している母なる山・富士山の環境保全なくしては三島の再生は成就できないとの信念で、着実な活動をこれまで積み上げてきた。
 平成四年には、一つの市民団体だけの努力では運動に限界があるとの認識から、イギリスを参考に、市民・NPO・行政・企業とが連携・協働し「グラウンドワ−ク三島(現在NPO法人)」を立ち上げる。本家であるイギリスの団体が見に来られ、「これはイギリスを超えている」と感想を洩らしたとか。
 ゴミ捨て場化した源兵衛川をホタルが乱舞する美しい川へと再生させ、絶滅した水中花・三島梅花藻を復活、井戸や水神さんを整備するなど、三島市内三十箇所において具体的で実践的な市民活動を展開してきた。平成十六年度には、その源兵衛川が、土木学会の景観・デザイン委員会デザイン賞「最優秀賞」を受賞した。
 渡辺さんたちのやってきた、今もやり続けていることを「グラウンドワーク三島」のホームページから超簡単に抜粋説明すると以上のようなことになろうか。
 渡辺さんの案内で、渡辺さんたちが積み上げてこられた活動の成果、拠点を見せていただき、目から鱗の感を強くした。一人の人間が机に向かってやった仕事でないことが素人目にも分かる。聞けば、何年もかけて議論し、スクラップ・アンド・ビルドとは真反対の「旧に復する」運動を展開してこられたとか。それは昔を懐かしむという懐古趣味的なものでは(昔を知っているお年寄りが懐かしむことはあっても)全くない。暮らしをラディカルに考え科学的知識に裏付けられた証しとしてあるようだ。十年以上かけてやってきたことに時代がようやく追いついたということか。土木学会が主催するデザイン賞「最優秀賞」の受賞がそのことをよく物語っている。おもしろい本ができるとの実感を持ちながら横浜に帰ってきた。
 ところで、三島の鰻があんなに美味いとは今の今まで知らなかった。