安心が危険

 

若いころ、
自宅で骨折した話を読んだり聞いたりすると、
野外でならわかるけど、
どうして家のなかで骨を折るような大けがをするのか
不思議に思ったものでした。
が、
還暦を過ぎた今、
そのことがようやく身にしみて理解できるようになりました。
たとえば畳。
これが危ない。
夕飯は畳の部屋と決めており、
折り畳み式の小さなテーブルを出すのですが、
裸足でも、靴下を履いていても、
畳の目の方向に足を載せると、
一所懸命だけれどつまらぬお笑い芸人ほどに、つるりと滑る。
畳がこんなに滑るとは。
それがこのごろの発見です。
また、
一日のいろいろを終えて、やれやれ、
どっこいしょ、
床に就こうとするときも、
危ない。
布団は柔らかいという先入観がありますから、
からだを丸ごとドシンと布団に落とそうとして、手を突っ張る。
一瞬ですが、
手首に相当な重量がかかる。
これが危ない!
というようなことでありまして、
こころを安んじ力が抜けることの多い自宅ではあるけれど、
それは危険と隣り合わせなんだ、
と、
このごろ実感しています。

 

・保土ヶ谷を水墨画にして通り雨  野衾