文字変換のおもしろさ

 

パソコン画面に向かい文字を入力すると、
利口な機械は、過去の入力データから判断するとでもいうのか
適切な漢字にすばやく変換してくれます。
礼儀正しく入力者のわたしに忖度してくれ
「ご主人さま、この漢字でよろしゅうございましょうか」
という声が聞こえてきそうなぐらい、
このごろの機械はいたって利口。
「そうかそうか。苦しゅうない。近う寄れ」
なんて。
しかし、
いくら利口でも、
こちらの入力における過去のデータが乏しい場合は、
一般的な変換傾向に準じて行うしかないようで、
ときどきおもしろい変換をしてくれることがあります。
そうした場合、
怒りがもたげるどころか、
健気な(!?)機械をかわいく思うことがしばしばで。
先日、
「ちかくのげんしょうがく」
と入力すると、
「近くの現象学」という文言が目の前に現れた。
あはは。
「近くの現象学」
いい、いい。
近くがあれば、遠くもある、か。
「遠くの現象学」
なんて。
数分、
そんなことで遊んで気晴らしができた。
ちなみに、
かつてメルロ・ポンティを、もちろん翻訳を通してですが、
日本語になっているものはほとんど読みました。
メルロ・ポンティのことを日常会話にさしはさむことで、
なんだかじぶんがいっぱし物を考えているような気分に浸ったり。
と、
あるとき、
おそらくメルロ・ポンティのものが日本に紹介され始めたころの話
かとも思いますが、
メルロ・ポンティがメルロ・ポンティでなく、
メルロ・ポンチとなっていた。
メルロ・ポンチ。
思わず、噴き出してしまいました。
長屋の八っつぁん、熊さんみたいで、急に親しみがわき。
八っつぁん熊さんポンチさん。
ポンチだと、
「知覚」よりは「近く」が似合っている。
味噌がなくなったからちょっくら隣の家で借りてこよう、
てな感じ。
メルロ・ポンチ著『近くの現象学』
ね。

 

・新緑を浴びて雀が三羽かな  野衾