二種類の旅

 

はじめて外国を訪れたのは、二十六歳のとき。
韓国でした。
あれから三十七年。
韓国を皮切りに、タイ、インド、インドネシア、中国、アメリカ。
インドがいちばん多く五回。
中国とアメリカが二回。
ん。
そうか。
インドに行く時は、
行きも帰りもバンコクに寄ったから、
滞在期間は短くても、
回数でいえばいちばん多い。
春風社を起こしてからは、一度も日本を離れていません。
しかし、
このごろは、
本を通して時の旅をしているような。
いまは、
紀元前のギリシャ、世界史にイエス・キリストが出現したころのパレスティナ、
また、紀元前の中国へ。
空間の移動による旅はたしかに、
さまざまなこと思い出す桜かなでありますが、
時間の移動による旅は、
体を現在に置いていればこそ、
それだけ一層、
微細なところまで感じ分けられる気もします。
かつて、
詩人の飯島耕一さんからご高著の謹呈に与ったとき、
見返しに、
「江戸に留学していたことの成果」
と書かれてあり、
なるほどと思いました。

 

・N’EXと指差す声を通り雨  野衾