霊魂歴程

 

世界は「解体して原子に」、無秩序な物質の分子と化し、
その形態も解体して永劫の変転世界となる挙句、
人は現にいまある姿のものではない。
恋し合う者たちの誓いが一向に不易不変でないということだけで
――恋に変らぬ点あるとすれば、
それは恋人たちが変り易いという一点、と詠ったのはダンその人である――
話は足りる。
恋人同士の誓い、
即ちその流動怖るべき肉体が発するものだからである。
(ロザリー・L・コリー[著]/高山宏[訳]『パラドクシア・エピデミカ
ルネサンスにおけるパラドックスの伝統』白水社、2011年、p.451)

 

文化史に関する名著とされているものの翻訳ですが、
この度の新型コロナウイルスのことがなければ、
読むのがもう少し後だった気もします。
日々、こころもカラダも、あたまも変化します。
本文中に紹介されているジョン・ダンの詩はこころに沁みます。
たしかに、
だれも孤島ではなく、
鐘はわたしのためにも鳴っているようです。

 

・包丁のさくりと春の厨かな  野衾