晩白柚

 

ご近所さんから「ばんぺいゆ」をいただきました。
漢字では晩白柚と書くのですね。
超巨大柑橘類。
いただいてからしばらくテーブルの上に置いていたのですが、
朝起きて部屋に入ると、
柑橘類特有の爽やかな香りがして
一気に気分が変ります。
あ!!
これって。
そう。
梶井基次郎のあの有名な小説『檸檬』(れもん)。
得体の知れない「不吉な塊」を抱いた「私」が、
もんもんとしたまま京都の街を歩く。
ところが。
途中で買ったレモン一個で気分が変り、
それを持って丸善の店へ。
と、
だんだんまたあの憂鬱が襲ってきて…。
このあたりの展開なんともリアル。
ふたたび襲ってきた鬱屈した気分を払うべく、
持っていたレモンを爆弾に見立て、
積み上げた画集の上にそっと置いてみる。
気分好転。
「私」は、
檸檬爆弾が丸善を吹っ飛ばすの図を想像しながらそのまま店を出る。
……………
わたしが使っている電子辞書にも入っていて、
いまどきですから、ちゃんと朗読までしてくれます。
コロナ禍に見舞われているきょうこの頃、
レモン一個で気分はどうしようもありませんが、
この超巨大な晩白柚なら…。
この想像を数日楽しんだあと、
爆発させることなくしずかにほどき、
中身を美味しくいただきました。

 

・はるがすみものみなつつむこころかな  野衾