オヤジの喜び

 先日、昔からなじみの店でお茶をご馳走になっていた時のこと。
 このごろよく顔を見せるようになったKちゃんがやって来た。可愛いので、みんな「Kちゃん」と呼ぶ。わたしも、鼻の下が伸びないように気を付けながら、Kちゃんと話したりする。
 それから小1時間もしたろうか。はじめて見る女性が店に入ってきた。Kちゃんとあいさつを交わしている。どうも、知り合いのようなのだ。わたしは、ぽけーと、その様子を見ていた。すると、その女性が「ご主人さまですか?」と、わたしを見て言った。呆気にとられ、きょとんとしているわたしをそのままに、今度はKちゃんに「ご主人さまですか?」と、言葉に出さずに、目で尋ねた。Kちゃんは臆することなく、「ええ、主人です」と言った。うれしかった。生きる喜びがふつふつと湧いてきた。わたしとKちゃんでは、親と子ほどの歳の開きがある。
 その話を後日、店のご主人に話した。ご主人大笑い。いわく、「そりゃあ、うれしいわ。それで10年は寿命が延びたね」。たしかに。

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