第3の目

 このごろよく街でヘソを見る。若い女性のファッションらしく、帯脈のあたりを風にさらし、颯爽と歩いている。屈んだり反りかえったりする場合、否が応でも腹と腰が露出される。
 きのうの昼。わたしと専務イシバシ、武家屋敷の3人は、野毛坂に向かって歩いていた。向こうから、母と娘なのだろう、女性2人が歩いてきた。母は中肉中背、ふつうの身なり。娘は、母の2倍半の体格をしていた。
 足を運ぶたびジーパンが悲鳴を上げるようであった。豊満な胸に持ち上げられ、着ていたTシャツはヘソに届かず、太鼓にかけられた薄布のように、腹の周りで風にひらひらとなびいている。わたしは、縦に切れた、第3の目とも言うべき彼女のヘソに惹きつけられた。仏像が身にまとう布のひだひだのごとき波打つ腹の真ん中に陣取った目は、じっとわたしを見据えた。
 見た? 専務イシバシも、武家屋敷も、毒を抜かれたような表情で、こっくりとうなずいた。第3の目は通常、眉間のくぼみの辺りを差すが、腹にあってもおかしくない。第3の目に射抜かれたわたしは、彼女の顔をまったく見なかった。それほどの眼力であった。

4677036c9c0ec-070609_1029~0001.jpg