出版人は趣味をもつな!

 岩田博さんが経営しておられる岩田書院という出版社がある。社員は岩田さん1人。4年前に無明舎から『ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏』という、出版人にとっては(おそらく、そうでない人にとっても)すこぶる面白く、ためになる本が出たとき、すぐに買って読み、その感想を岩田さんに送った。ホームページに掲載していただいたのが縁で、その後、目録や「新刊ニュース」を送っていただくようになった。
 きのう届いた「新刊ニュース」の「裏だより」(赤裸々な出版事情が克明に記された稀有な内容で、この第1号から第267号までまとめたものが『ひとり出版社〜』だ)には、かつて600部つくった本が6年かけて完売したことが報告されていた。その数字が、今の出版事情を如実に物語っていると思われた。
 また、こういう感想は、岩田さんに怒られるかもしれないけれど、岩田さんは本づくりが本当に(つらさも含め)好きなのだなと思った。総合商社みたいな巨大出版社のことは知らない。日本の出版は、多くは岩田さんに代表される出版人によってもっている。わたしも、その端くれでありたい。あなたの趣味はと訊かれ、臆せずに、出版ですと答えられる人(会社)しか生き残れない情況が、哀しくも今の出版界を支えている。

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