日本人は紙が好き

 

・新緑や見とれ呆けて夢去れり

先日、
出版業界の動向に詳しい業界紙の記者に会う機会があり、
このごろいい話がありますかと訊いたところ、
ありませんと。
とりわけ電子書籍が伸び悩んでいると。
さもありなん。
源氏物語を読み終えたばかりでしたから、
よけいにそう思ったのかもしれません。
源氏物語を読みながら、
紙が出てくる場面に注目すると、
数えてはいませんが、
相当の頻度で現れます。
そもそも
源氏物語は紙に書かれたのですから、
紙の存在は、
物語の進行ばかりか
その成立に深く関わっています。
道長が、
当時貴重な紙を紫式部に提供したのだろうと
いわれているようです。
触れることが大事なんだなと、
これは、
今回源氏物語を読んで直感したことです。
日本人は、
触れることで物と人を慈しんできた。
紙に触れて物語を慈しみ、
髪に触れて女を慈しむ。
また、
かみは神にも通じています。
経済の流行りが過ぎたころ、
かみは
物言わずに、
やっぱりでんと、
あるいはかそけく
座っている気がします。

・新緑や物思ふてマッチ擦る  野衾