問いをはぐくむ

 

・新緑や風の流れを見てゐたり

姜信子/ザーラ・イマーエワ著
『旅する対話 ディアスポラ・戦争・再生』の書評が
「週刊読書人」四月十九日号に掲載されました。
評者は東京経済大学教授の本橋哲也氏。
コチラです。
書評のなかで本橋氏は、
「姜信子さんは、
「西洋的な自己」を確立しようとした日本の近代によって
産み出されたディアスポラたち、
在日、炭鉱、水俣、沖縄、ハンセン病といった近代軍需産業資本主義による
負の遺産に寄り添い、それらが自らの肌と耳に刻んだ痕跡を
類まれな詩的言語で表出してきた。」と語っています。
同感です。
本書を読みながら、
わたしは石牟礼道子さんを思い出しました。
石牟礼さんの代表作である『苦海浄土』の副題は「わが水俣病」。
二〇一一年三月一一日以降の状況を、
たとえば「わが原発」として捉えるために、
問いをうるおし、
はぐくむために、
即答を求めるのではなく、
「さらなる対話へと誘う」本です。
どうぞお手に取って読んでみてください。

・時忘れ五月半ばとなりにけり  野衾