退屈讀本

 

・閑かさや秋の日に読む昆虫記

朝のコーヒーを淹れる隙間の時間で読んでいた
薄田泣菫『茶話』が終ったので、
この時間のつぎに読む本は
佐藤春夫の『退屈讀本』。
「読」の字が「讀」となっています。
冨山房百貨文庫にも入っていますが、
わたしが持っているのは
大正十五年に新潮社から出版されたものです。
発行者は佐藤義亮。
そのいちばんはじめに
「文體の事、その他」とあって、
チエホフについて書かれています。
今ならチェーホフと表記するところでしょう。
「「チエホフの手紙」を僕は同じ人の作品よりももつと愛してゐる。さう斷言出來る。そのなかには親愛で明快で内氣でしかし毅然とした人柄が、作品よりももつと直接に、さうしてもつと「雅致」を持つて一行ごとに生きてゐる。作品には型があるが、手紙には人柄だけしかない。……」
ふむ。
手紙には人柄だけしかない、か。
中央公論社からでている『チェーホフ全集』
売っちゃったしなあ。
「愛してゐる」ってか。
ふむ。
書簡を収録した二巻分だけでも買い戻すかな。
こうやって、
また本が増えていきます。

・渦巻きの風や熱帯低気圧  野衾