不思議な魅力
コール先生と一緒に『新井奥邃著作集』を監修してくれた工藤正三先生から何度か聞かされたことで印象に残っている言葉がある。「これだけ近づいたかなと思うとまだ遠い。さらに近づいたかなと思うと、また遠くなる」奥邃についての感想だ。
工藤先生の親戚筋にあたる工藤直太郎氏は2000年に106歳で亡くなられたが、謙和舎で奥邃と共に暮らしたこともあり、青山館という出版社(今はない)から『新井奥邃の思想』、『内観祈祷録』(奥邃のInward Prayerの翻訳)を上梓している。工藤先生は、2冊の本の編集・出版に関わる頃から奥邃の文章に親しんで来られた。奥邃読みとしては第一等の先生がふと洩らした言葉だけに、不思議な気がしたものだ。
斯界の泰斗、谷川健一先生や飯島耕一先生も奥邃の不思議な魅力を感得されたようだ。その魅力は、現代とこの先の世界を照射している。まずは、直に奥邃の文章に触れてほしい。