ラーニング・ボックス

 横浜児童文化研究所の立川先生、原所長来社。立川先生はすでに小社から『知的障害児のためのラーニング・ボックス学習法』を上梓しており、この手の専門書としては売れ行きも上々、ほぼ完売に近い。ところがこの本、読者から難しかったとの感想が多いと聞く。
 ラーニング・ボックス学習法とは、ひとことで言ってしまえば、自学自習のシステム。これは、立川、原の両先生を中心とする横浜児童文化研究所の長年の試行錯誤の中から産み出されたもので、実際に見てみれば、理屈はともかく、その素晴らしさの一端は誰でも分かる。普通学級(この言い方は差別的)では歯牙にもかけられなかった子供たちがラーニング・ボックスを用い、生き生きと学習する。知的障害児に接し何をどう教えていいのか、手をこまねいて見ているしかない先生たちは、あの姿を見たら仰天すること必至だろう。『知的障害児のための〜』は、人間が学習するということ、分かるということの本来的な意味を根底から問いかける革命的な知の体系であり、理論書、また実践書なのだ。
 うがった言い方をすれば、革命的な本というのはいつでもそうだ。それを必要とする人は本に齧りついてでも理解しようとする。『知的障害児のための〜』を、読んで分かるところだけ分かり、それを実際に役立てている人もあると聞いた。
 昨日は、教育の根本を問いかけるこの本に至る裾野を広げるための企画について打ち合わせ。知的障害児をもつ親に集まっていただき、わが子がラーニング・ボックスを使い、いかに学習し、どんなふうに変わったのか、実際のところを話してもらおうということになった。また、立川先生には、先生が「反省と後悔の日々」と仰る実践の中で鍛えぬかれた「学び」「分かる」について、わたしがインタビューすることにした。
 この企画、元をただせば『心理学|梅津八三の仕事』が縁だった。