仕事が会社を選ぶ

 会社のコンセプトがあって、それに応じて企画し仕事を選ぶというのが普通のあり方だろうが、逆に、仕事のほうが自律的に会社を選ぶということもあるのだろう。
 1968年から70年にかけ東京大学の学生だった平沢氏が撮った写真集をウチから出すことになった。『東大全共闘・68-70』。昨日その写真を見、モノクロ写真に写し出された当時の学生たちの真剣な表情に打たれた。立て看板に有名な「連帯を求めて孤立を恐れず」の文字も見える。怒り、願い、焦燥、時代の空気までがそこにはある。
 若き日の平沢氏にとって、われらが写真家・橋本照嵩はヒーローだったのだそうだ。写真集『瞽女』に驚き、懐かしそうに見ていた。橋本さんが草むらを一時期撮っていて、自分がある時から木を撮り始めたのは橋本さんの影響があるかも知れない、とも語った。平沢さん、すっと立ちあがり、書棚に並ぶ『新井奥邃著作集』に目をやった。背文字をじっと見、それから一冊手に取りぱらぱらめくった。東大の学生だった頃の平沢氏、その後の編集者生活35年の時間が、今、目の前にいる平沢さんと重なる。いい写真集が出来そうだ。