大あくび
つままれし蛇のうろたふ「ひ」の字かな
仕事を終え、紅葉坂をてくてく下り、
横断歩道を渡って、
そこで曲がらずにさらに二十メートルほど進んでから
右に曲がります。
JR京浜東北線と並行するちょうど裏通りに当たり、
表通りほど、うるさくありません。
ですから、晴れた日には、
だいたいそのコースを通って
桜木町の改札に向かいます。
きのうもそうでした。
空を見たり、辺りを見回しながら歩いていくと、
反対方向から女性が近づいてきました。
人通りが少ないので、
つい、彼女のほうに目を奪われました。
齢五十は回っていると思われます。
と、突然あくびをしました。
晴れてるし、
気持ちが良かったのかもしれません。
大あくびです。
それも、相当長い時間。
ああああああああああ、と、
空を仰ぎ見ながら、まだあくびをしています。
やっとあくびが終り、
それから何事もなかったように歩いていきます。
ちょっとうれしくなりました。
わたしもつられてあくびが出ました。
長さは彼女の三分の一ぐらいでしたでしょうか。
山の上ホテルを遊ぶ五月かな