心意気

 

 マンホール耳を澄ませば亀の鳴く

ヨコハマ経済新聞に掲載された
春風社の記事を読んでくださり、
朝日新聞の佐藤善一さんから電話があったのが
十日ほど前。
朝日新聞の読者にも、
横浜にこういう出版社があるということを記事にし
ぜひ知らせたいとのありがたい電話で、
それから佐藤さんは、
伊勢佐木町の有隣堂本店に走り
拙著『出版は風まかせ』を買ってくださり、
それをていねいに読んだ上で、来社された。
佐藤さんの本には、付箋が何枚も貼られていた。
インタビューは二時間に及び、
写真も撮ってくださった。
どんな記事になるのかと楽しみにしていたところ、
一昨日、佐藤さんから連絡があり、
きのうの朝日新聞神奈川版に掲載された。
それがコレ
この記事を読ませていただき、驚いたのは、
たしかにインタビューに基づいてはいるが、
わたしの話したとおりの言葉は、一つもないことである。
すべて、自分で話を消化した上で、
後から言葉がつむぎ、そうして出来上がった文章だ。
わたしが話したことだから、それがよく分かる。
新聞は、今となってはむしろ
スローなメディアかもしれないが、
インターネットに代表される速報性のあるメディアとは
異なるメディアであることを、目の当たりにした。
佐藤さんは、インタビューを終えての帰りしな、
「春風倶楽部」創刊号に収録されている安原顯さんの
文章のコピーを希望された。
どこにどういうふうに使うのかなと思っていたのだが、
たった18文字、引用というのでなく、
実に見事に用いている。
わたしは今も、丸刈りに銀縁メガネがトレードマークなのだ。
佐藤さんに、メールと電話で御礼を伝えたところ、
へたくそな文章で…と恐縮しておられた。
十年間の春風社の歴史を短い文章でまとめるのは難しいとも。
その言葉がありがたかった。
新聞記者のこころざしと心意気を感じた。

 黙すれど訪ねてみたし春の山

100313_1132~0002