手が読む
新しい原稿が入ってくると、まずザッと読んで内容を把握し、装丁を含めどういう作りの本にするか凡その見当をつける。この時点では眼と頭で読んでいる。
さて校正だ。右手にボールペンか鉛筆を持ち文字通り一字一句、札をひっくり返すようなスピードで吟味していく。枝葉を取り去るだけですっきりと読み易くなる場合は割と仕事が捗る。問題はそれでうまくいかない場合。
著者の言わんとするところを汲みつつ、その文意にさらに適合する単語や熟語を見つけ、また、センテンスを分けたり伸ばしたり、組み立てをまるっきり換えてしまうこともある。この作業が必要な場面にくると一気に仕事のスピードが落ちる。
うまい言葉が見つからず、椅子から離れベランダに出て新鮮な空気を吸ったり、盆栽の新芽を覗いたり、ふたたび社屋に入りウロウロし、部屋の真ん中にあるテーブルに煎餅やチョコレートがのっていればそれを摘まみ、なければ椅子に戻って二、三度わが身をくるくる回転させたり、机上に積んである本の背文字をぼんやり睨んだり、挙げ句の果ては神経的に自分とこのホームページにどなたか書き込みをしてくれていないかチェックしたり、メールボックスをさっき見たばかりなのに無意識でまた開いてみたりと、めまぐるしい。なにかに縛られているような感じ。動物園の白熊があっちにウロウロこっちにウロウロしている気持ち(!?)がよくわかる。
パッと閃く時もあればそうでない時もある。閃いて決まった! と思えるのは一日のうち何度あるだろう。体調によるところも大きい気がする。
三浦さんの心模様が分かる、とても読みやすい日記ですね。
編集者じゃなくとも、ディスクワークをしている人は、
みんな似たような行動を取っていると思いますが、
こんな風に自分のことを、なかなか文章化できないですよ。
さて、三浦さんは今頃何をしているのだろうか。(笑)
言葉って不思議ですね!! 生き物のように変わるし、わかり易くズバリを探すの本当に大変な時が・・・・・・・プロのプロが悩むときがあるのですからわれわれ凡人があたりまえですよね!!! 魅力ある言葉をたくさん知りたいです
今回のタイトル「手が読む」にとても心ひかれました。
ところで三浦さんは、毎日のタイトルを、最初につけるのでしょうか? それとも全文書いてから? 興味津々・・・です。
>seikiさん
その頃はおそらく机の引出しから鏡を取り出し鼻毛の伸び具合などチェックしていたのではなかったかと…。
>ひめくんさん
うんうん唸って歯軋りするせいか、奥歯が…。(今日の「よもやま」)
>アンさん
両方です。しかし、一番多いのは、あるタイトルで書き始めながら数行書いたあとでタイトルを換えるというパターン。着地点がどこかわからずに書いていることが多いものですから。