横浜防疫所

 

 大風やインフル菌を吹き飛ばせ

きのうのことです。
仕事を終えて外へ出、
台風まだかなと空を仰ぎ見ながらてくてくと
紅葉坂を下りていったら、
スーツにネクタイ姿の若者が片手にキャリーバッグ、
片手に地図帳を持ちながら、きょろきょろ辺りを見ていました。
やおら私に近づいてきて、
「弁天橋はこの辺でしょうか?」
「いやぁ、知らないなぁ」と応えました。
「そうですか…」と若者。きょろきょろ坂道を上っていく風でした。
わたしは交差点まで歩き、信号待ちをしながら、
さっきの若者が気になり、振り向くと、
とぼとぼとこっちへ下りて来ます。
かわいそうになり、「あなた、どこへ行きたいの?」
「東横インです」
「それなら反対だよ。ちょっとさっきの地図を貸してごらん。
ほら、ここにワシントンホテルと書いてあるでしょ。それがアレ。
ね。見える? ワシントンホテルの横の橋を渡ったところが東横イン。
ああ、あの橋が弁天橋っていうのか。それは知らなかった」
「地元の人でも知らないことがあるんですね」
「よけいなこと言うなよ。とにかく近くまで行ってあげるから、
着いて来なさい」
若者、にこっと笑い、くっついて来ました。
道々聞けば、三重県から横浜防疫所の試験を受けに来たのだそうです。
本当は県庁に入りたかったのだそうですが、
このご時世、県庁はさすがに難関らしく、
大学での勉強を生かし、横浜防疫所を受けに来たとのこと。
「がんばれよ」
「ありがとうございました。ありがとうございました」
「いいから。ほら、クルマに轢かれるよ。気をつけろよ」

 猿股で米を担ぎし父の秋

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