安心の川

 

・春の夢さきちゃんと行くマラソンだ

物心ついてから
小学校低学年ぐらいだろうか
祖父と祖母に
はさまれて 寝ていた
右にころがれば 祖父
左にころがれば 祖母
夏ともなれば
蚊帳まで吊って
しずかな祭りの始まりです

ほー ほー ほーたるこい

祖父の匂いは 藁と馬
祖母の匂いは 山と雨
わたしは
安心の川の中にいて
気がかりなことは毛ほどもなかった
右にころがれば 祖父
左にころがれば 祖母

いまは二人
小さい写真に納まり
わたしの頭の上にいます

今宵も雨が降るわいな

・春の風土の中から芽吹かせよ  野衾