蟬君

 

・雨上がり葉裏さやけし蟬しぐれ

八月に入りいよいよ暑くなってきました。
が、
そんなに長くは続かないでしょう。
そのうち秋は忍び込み。
蟬君たちは、
最大音量で鳴いているものの、
一歩外へ出れば、
あちこちでころんと死骸が落ちています。
傷んでいない死骸を拾い上げると、
死骸かと思いきや、
ぎぎ、ぎぎと鳴くから、
ちょっとうれしくなり、
緑のほうへ放ってやると勢いよく飛んでいくのもいます。
きのうは体半分になった蟬君の死骸を、
葬儀係よろしく蟻たちが
せっせせっと片付けていました。
いのちの片付け。
いのちが形を成して怒ったり、泣いたり、
解けたり、
愛し合ったりもして、
最後片づけてもらいます。

・夕涼や米白くなり研ぐほどに  野衾