『老アブー』

 

昨年12月に弊社から刊行された『老アブー』は、
2019年にフランスで出版されたナタリー・ド・クルソンさんの小説の日本語訳。
訳者は、高井邦子さんと大野デコンブ泰子さん。
老いて認知症になった父を5人の子供たちが世話します。
国はちがえど、
そこに展開される悲喜こもごもは、ふへんてきな問題を扱っているといえます。
子供たち5人のやりとりがメールで行われるあたり、
まさにいまの時代であることが分かります。
この小説を読みながら、ふと、
小津安二郎監督の映画『東京物語』を思い出しました。
尾道から上京する老いた両親と家族たちの姿から、
親に対する子供たち、戦死した次男の妻、
それぞれの性格、人となりがあぶり出されてくる映画でした。
親に対する子供のこころというのは、
なかなかひとすじなわではいかないようです。
きのうの読売新聞に書評が掲載されました。評者は、
作家の宮内悠介さん。

 

・春愁や厚き雲より飛行船  野衾