お釈迦さまのこと 3

 

仏教は仏教単独でできあがったものでなく、
それ以前のバラモン教からの影響もあるようです。
たとえば護摩を焚く儀式は、
ことに触れテレビでも目にしますが、
それがバラモン教からのものであることを知りませんでした。
さて、お釈迦さまは悪魔に誘惑されます。

 

そこへ悪魔、ナムチがいたわりの言葉を発しつつ、近づいてきた。
「あなたは瘦せていて、顔色も悪い。
あなたの死が近づいてきた。
あなたが生きながらえる見込みは、千に一つの割合だ。君よ、生きよ。
生きたほうがよい。
命があってこそ、諸々の善行をなすこともできるのだ」
命あってのものだね、
ということをいったのですね。
「あなたがヴェーダ学生としての清らかな行ないをなし、
神聖な火に供物を捧げてこそ、多くの功徳を積むことができる。
苦行につとめはげんだところで、
何になろう。
つとめはげむ道は、行き難く、行ない難く、達し難い」
バラモン教では火を焚いて、それに供物を捧げます。
火が供物を焼くわけです。
その火の煙が天の世界に供物を運んでいく。
それによって功徳を積むことができるといいます。
これはバラモン教のヴェーダ以来のしきたりです。
これがずっと後代の密教の時代に仏教に入って、
成田山とか真言宗の寺で見られる、護摩を焚くという儀式になります。
(中村元[著]『ブッダ入門』春秋社、2011年新装版、p.109)

 

そういうことだったんですね。知りませんでした。
たとえばこのことからも、
きびしく線引きをし、ジャンルをくっきりはっきりさせるのではなく、
グローバルな視点をもつことはとてもだいじなようです。

 

・電柱のチラシはためく春に入る  野衾